コラム

Vol.44

第24回目の今回は、SASBの「Engagement Guide Version2.0」より、「運輸セクター(Transportation Sector)」から「自動車(Automobiles)」関連企業とのエンゲージメントテーマを取り上げます。

自動車業界は、乗用車、小型トラック、オートバイを製造する企業で構成されています。この業界のプレイヤーは、従来型のみならず、これに代わるものも含めた様々な燃料・駆動装置を使用して走行する車両を設計、製造、販売しています。これらの車両を小売ディーラーに販売するだけでなく、レンタカー会社やリース会社、商用車、公用車向けにも直接販売しています。この業界のグローバルな性質により、ほぼ全ての企業が世界のいくつかの国に製造設備、組立工場、サービス拠点を有しています。自動車業界は、少数の大手完成車メーカーと多種多様なサプライチェーンで構成されている非常に密度の濃い業界です。この業界の天然資源への依存度と景気循環への敏感さを考えると、その収益は起伏が大きいものとなります。

自動車業界のエンゲージメントテーマは、「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルおよびイノベーション」「その他考慮事項」で構成されています。

「社会資本」に関しては、「製品の安全性」をテーマとして掲げ、「企業は、自動車の安全規制遵守義務をどのように担保しているのか?またどのように顧客の安全を優先させているのか?」、「どのような安全上の問題や規制が最も重大なリスクと機会をもたらすのか?そして、企業は、これらの機会がどのように表れると認識または期待しているのか?またリスクについてはどのように軽減しているのか?」、「安全関連の不具合に関する苦情を特定し調査するプロセスはどのようなものか?」「企業は、自動車の安全性に関連するどのようなリスクに直面しており、これらのリスクをどのように管理しているのか?」という点についてエンゲージメントを図ります。

「人的資本」については、「労働慣行」をテーマとし、「従業員に関連する主なリスクと機会とは何か?そして、団体交渉協定の対象となる労働者を含む、全従業員との関係をどのように管理しているのか?」、「企業は、労働関連の生産中断リスクをどのように最小化しているのか?」という点に焦点を当てています。

「ビジネスモデルおよびイノベーション」については、「燃費および使用時の排出量」、「資材調達」、「資材効率性とリサイクル」をテーマとしています。「燃費および使用時の排出量」については、「同業他社と比較して、当該企業は低燃費車市場に対応する上でどのような立場にあるのか?」、「企業にとって、燃費や排出に関する最も重大なリスクとは何か?」といった点に着目しています。「資材調達」では、「重要な資材を使用する際に生じるリスクもしくはサプライチェーンが分断する可能性に関して、企業はどのような影響を受けるのか?また、そうしたリスクをどのように管理しているのか?」ということを取り上げています。「資材効率性とリサイクル」については、「資材効率を改善し、製造時の廃棄を削減するため、どのような対策を取っているのか?」、「自社製品のリサイクル率と再利用率をどのように向上させているのか?また、使用済み資材を再生利用するために、どのようなプログラムが適用可能なのか?」という点に着目しています。

「その他考慮事項」については、「生産台数」と「販売台数」を挙げています。