コラム

Vol.34

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第14回目の今回は、「金融セクター(Financials Sector)」から「保険(Insurance)」関連企業とのエンゲージメントテーマを取り上げます。

保険会社は、従来型と非従来型の両方の保険関連商品を提供しています。従来型の保険商品には、損害保険、生命保険、傷害保険、再保険が含まれます。一方、非従来型商品としては、年金型保険、代替リスク移転型保険、金融補償保険といったものが含まれます。保険業界に属する企業は、資産負債管理のために自己勘定による投資も行っています。保険料、保険引受利益、および投資収益は業界の成長を促進する一方で、保険金請求への支払いは、最も重要なコストであり、収益の不確実性の原因となります。

保険会社が果たしている重要な役割には、経済がうまく機能する上で必要なリスクの転移、貯蔵、共有を可能にする製品やサービスを提供することがあげられますが、その一方で、サステナビリティインパクトに対する根本的な態度や行動、あるいは貢献を改善しようとする意欲を低下させるという、一種のモラルハザードも同時に作り出しています。他の金融機関と同様、保険会社は信用リスクや市場リスクに直面しています。保険業界内でCDSのプロテクション(訳注:デフォルトが起きた場合に損失相当額を受け取る権利)や債務証券といった非従来型保険商品や非保険型事業に従事する企業は、金融市場の動向に影響されやすく、したがって、システミックリスクを増幅する一因となりがちである、と規制当局は認識しています。

その結果、保険会社は、システム上重要な非銀行金融機関として指定される可能性に直面しています。

保険業界のエンゲージメントテーマは、「環境」「ビジネスモデルおよびイノベーション」「リーダーシップおよびガバナンス」「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」については、「環境リスクエクスポージャー」をエンゲージメントテーマとして取り上げており、「気候関連の自然災害に対するポートフォリオのエクスポージャーにはどのようなものがあるか?」、「潜在的な損失を最小限に抑えるために、環境リスク要因を保険引受プロセスにどのように統合しているのか?」、「保険引受ポートフォリオの環境リスクエクスポージャーを削減するために、どのような環境配慮活動促進商品を提供しているか?」といった点に着目しています。

「ビジネスモデルおよびイノベーション」では、「投資運用への環境、社会、ガバナンスに関するリスク要因の統合」をテーマとし、「投資運用において、環境、社会、ガバナンスに関するリスク要因をどのように統合しているのか?」、「投資ポートフォリオのESGリスクエクスポージャーと自己資本要件や保険金支払い余力とのバランスをどのようにとっているのか?」という点を確認しています。

「リーダーシップおよびガバナンス」においては、「システミックリスク管理」をテーマとし、「当社は、CDSや買い戻し条件付債権といった非保険契約者負債のエクスポージャーと、金融および経済危機から生じるショックを吸収する能力をどのようにバランスさせているのか?」という点を取り上げています。

「その他考慮事項」としては、「1)損害保険、2)傷害保険、3)生命保険、および4)再保険といったタイプ別に販売される保険契約の数」が挙げられます。