2026年6月-Vol.361
  • 概要
  • 国内債券
  • 国内株式
  • 外国債券
  • 外国株式
  • 為替動向
  • 虫眼鏡

主なポイント

今月は主要中央銀行の金融政策決定会合が開かれます。ECB(欧州中央銀行)理事会では、主要国のインフレ率が目標である2%を上回っていることなどを背景に、利上げが決定される見込みです。日本でも、複数の日銀高官から利上げに前向きな発言が出ており、追加利上げが決定される可能性が高まっています。また、長期金利の上昇を受け、国債買い入れ計画の中間評価にも注目が集まりそうです。エネルギー価格の上昇によるインフレ懸念が高まるなか、主要中央銀行が利上げ局面に入る可能性があり、今後の物価動向が注目されます。
今月の主なポイントは以下の通りです。

6/10 (米)5月CPI・・・高い伸びが継続か
6/11 (欧)ECB・・・利上げが見込まれる
6/15 (日)金融政策決定会合(16日まで)・・・利上げの可能性
6/16 (米)FOMC(連邦公開市場委員会)(17日まで)・・・現状維持が見込まれる
6/19 (日)5月全国CPI・・・上記参照

市場見通し

国内債券

長期金利は、中東情勢の不透明感などを背景とした物価上振れリスクの高まりや、日銀の追加利上げ観測を受け、上昇すると予想する。

国内株式

金利の上昇懸念から当面は株価の上値が重いものの、今期業績見通しが良好な電機などが牽引し、上昇を予想する。

海外債券

<米国>米国・イランの和平協議への進展期待は金利低下要因となるものの、エネルギー価格の高止まりを受けたインフレ懸念が続くことから、金利は上昇すると予想する。

<欧州>ドイツの景気回復が緩慢であることは金利低下要因となるものの、エネルギー価格の高止まりを背景にインフレ懸念が継続することや、ECBが利上げを開始すると見込まれることなどから、金利は上昇すると予想する。

海外株式

<米国>米国経済が堅調さを維持するなか、半導体などを中心としたAI設備投資関連銘柄や生産性向上が利益成長を支える展開が継続し、底堅い推移を予想する。

<欧州>エネルギー価格の高止まりや金利上昇による経済への影響が懸念されるものの、堅調な企業業績動向やドイツを中心とした財政拡張政策に支えられて、底堅い展開を予想する。

為替市場

中東情勢の不透明感や日本の財政悪化懸念は上昇要因となるものの、日銀による利上げが下落要因となることから、ドルは対円で下落すると予想する。欧米ともに金利は上昇を見込んでいるものの、ECBが先行して利上げを開始するとの見方から、ユーロは対ドルで上昇を予想する。

政策金利
出所:Bloomberg

国内債券

5月の国内債券市場

指標銘柄/新発10年国債

5月の国内長期金利は、物価上振れリスクの高まりや財政悪化懸念を背景に上昇し、月末は2.655%で終了した。

国内長期金利は、日銀の4月会合の主な意見で、物価上振れリスクを懸念する意見が多かったことや、政府が補正予算編成を検討しているとの報道を受けて財政悪化懸念が高まり、2.7%台に上昇した。その後、原油価格の上昇などを受けて、一時2.800%まで上昇する局面もあったが、米国とイランの停戦合意への期待から原油価格が下落に転じたことや、米長期金利も低下したことなどを受けて低下し、月末は2.655%で終了した。

イールドカーブについては、物価上振れリスクや財政悪化懸念などから、長期・超長期ゾーンを中心に上昇し、スティープ化した。信用スプレッドは、横ばいとなった。

6月の国内債券市場

6月の国内長期金利は、中東情勢の不透明感などを背景とした物価上振れリスクの高まりや、日銀の追加利上げ観測を受け、上昇すると予想する。6月の債券市場のポイントは、①中東情勢の動向、②日銀の動向、③米国金利の動向であるが、引き続き①中東情勢の動向の影響が最も大きいとみられる。

①<中東情勢の動向>5月末にかけ、米国とイランの停戦合意への期待から原油価格は下落に転じているが、ホルムズ海峡の通航量増加は限定的で、エネルギー供給を巡る不透明感は依然として残る。日本では、物価上昇と景気減速の同時進行リスクが高まるなか、政府は物価高対策として補正予算編成を表明しているほか、食料品の消費税率引き下げも検討しており、財政悪化懸念が高まっている。中東情勢は金融政策と財政政策の双方に影響を与え、金利の変動幅を拡大させる要因となり得る。

②<日銀の動向>5月に公表された日銀の4月会合の「主な意見」では物価上振れリスクを懸念する意見が多く、政策委員会内では物価上振れへの警戒感が強まっているとみられる。6月は3日に植田総裁の講演があり、15~16日の金融政策決定会合に向け、どのような見解を示すかが注目されている。また、6月の会合では、日銀による国債買い入れ減額計画の中間評価も実施され、27年4月以降の計画が注目されている。植田総裁の講演内容次第では日銀の追加利上げ観測が変化するほか、今後の国債買い入れ減額計画が国債の需給に影響を与え、金利の変動幅が大きくなることが考えられる。

③<米国金利の動向>米国では、原油高によるインフレ懸念はあるものの、産油国であることやAI関連投資が堅調なことなどから、現時点で大幅な景気減速は見込まれていない。このような環境下で、市場ではFRB(連邦準備理事会)による政策金利据え置きの長期化が織り込まれており、一部では利上げの可能性も意識され始めている。今後も中東情勢や原油価格の動向次第でFRBの金融政策見通しが変化し、米国長期金利の変動を通じて国内金利にも影響を与えると考えられる。

イールドカーブは、フラット化すると予想する。信用スプレッドは、横ばいを予想する。

国内株式

5月の国内株式市場

日経平均株価225種 東証株価指数(TOPIX)

5月の国内株式市場は、中東の地政学リスクに伴う乱高下を経て、AI関連銘柄および主要企業の堅調な決算を下支えに史上最高値を更新する展開となった。

本格化した主要企業の決算では、2025年度の好業績にとどまらず、依然として不透明感のある中東情勢を織り込んだ上で全体の6割強の企業が2026年度の計画で経常増益や増配を維持するなど、総じて底堅い業績見通しと前向きな株主還元策が示された。その結果、市場の目線はこれまでの警戒モードから、企業業績の裏付けを伴う業績相場への期待へとシフトした。中旬以降は中東情勢の緊張や金利上昇から一時大きく下げる場面もあった。しかし、下旬以降は米国と中東諸国の停戦交渉進展への期待や米半導体大手の好決算および有力AI企業の新規上場報道が重なり、月末にかけても好決算が下支えするなか、AI関連銘柄への期待が市場を大きく牽引した。結果、日経平均株価は11.88%の大幅な上昇となった。業種別には、サービス、金属製品、電機などが上昇し、鉱業、不動産、建設などが下落した。

6月の国内株式市場

持続的なインフレと財政規律への懸念から長期金利に上昇圧力がかかり当面株価の上値は重いが、利ざや改善が期待される銀行や今期業績見通しが良好な電機や機械などが牽引し、上昇を予想する。

日銀が金融政策決定会合で政策金利を1.00%へ引き上げるとの追加利上げ観測や、高市政権の積極財政に伴う国債増発への懸念から、日本の長期金利が上昇しつつあり、これまで市場を牽引してきた期待度の高い銘柄を中心に利益確定売りなどが先行し、当面は上値の重い展開を予想する。

一方で、米国の雇用やAI産業への設備投資は依然底堅く、企業業績そのものは悪化していない。また、日本の企業業績についても金利上昇に伴う利ざや改善が期待される銀行や、AI関連を中心とした半導体や設備投資の増加などを背景に良好な業績見通しを示した電機、機械などの製造業を中心に増益の予想となっている。引き続き日本企業の資本効率向上など稼ぐ力が評価されるトレンドは継続すると考えており、日銀をはじめとする中央銀行イベントを通過した後の株価は堅調な推移となることが見込まれる。リスクとして、想定外の政策金利の引上げや国債買い入れの急減などは考えておく必要があるが、実体経済を冷すような金融政策はこれまでの日銀の動向から考えにくく、想定通り0.25%の利上げであれば、市場にはある程度織り込まれていると考えられ、必要以上の警戒は不要であろう。

外国債券

5月の米国債券市場

米10年国債

5月の米国の長期金利は、米国とイランによる和平協議進展への期待から低下する場面もあったものの、FRB(連邦準備理事会)の利下げ期待が後退したことなどから、上昇した。

前半、米国とイランによる和平協議進展への期待から4.3%台前半まで低下した。中旬、CPI(消費者物価指数)やPPI(生産者物価指数)が予想を上回り、FRBの利下げ観測が後退したことや、日本や英国の長期金利が上昇すると、米国の長期金利にも上昇圧力がかかり、一時、4.6%台後半まで上昇した。後半は、米国とイランによる和平協議進展への期待から低下し、月末は4.4%台前半となった。

イールドカーブは、利下げ観測の後退などから、フラット化した。

5月の欧州債券市場

ドイツ10年国債

5月の欧州(ドイツ)の長期金利は米国とイランによる和平協議進展への期待から低下した。

前半、中東情勢の緊張緩和期待から2.9%台半ばまで低下した。中旬、日本と英国の長期金利が財政悪化懸念などから上昇すると、ドイツの長期金利にも上昇圧力がかかり、一時、3.2%程度まで上昇した。後半は、米国とイランが合意間近との報道などから低下し、月末は2.9%台前半となった。

ドイツ国債のイールドカーブは、小幅にスティープ化した。周辺国国債とドイツ国債の利回り差は、原油価格が下落するなか、イタリアなどを中心に縮小傾向が継続した。

6月の米国債券市場

6月の米国の長期金利は、米国とイランの和平協議の進展期待は金利低下要因となるものの、エネルギー価格の高止まりを受けたインフレ懸念が続くことから、上昇すると予想する。

6月の欧州債券市場

6月の欧州(ドイツ)の長期金利は、ドイツの景気回復が緩慢であることは金利低下要因となるものの、エネルギー価格の高止まりを背景にインフレ懸念が継続することや、ECB(欧州中央銀行)が利上げを開始すると見込まれることなどから、上昇すると予想する。エネルギー価格上昇に伴う財政支出拡大が懸念されることで、周辺国の対ドイツ国債スプレッドは高止まりを予想する。

外国株式

5月の米国株式市場

米国S&P500指数 ダウ工業株30種平均

5月の米国株式市場は、S&P500指数で5.15%の上昇となった。AI関連の堅調な決算を受け、半導体指数が先導して最高値を更新した。その後は、米中首脳会談への期待が支援材料となる一方、中東情勢を巡る不透明感から原油価格や長期金利が上昇し、株式市場が軟調に推移する場面もみられた。しかし、その後は中東情勢の緊張緩和への期待が高まり、投資家心理が改善したことで反発した。セクターでは、情報技術、一般消費財・サービス、ヘルスケアなどが上昇する一方、エネルギー、公益事業、生活必需品などが下落した。

5月の欧州株式市場

ドイツDAX指数 イギリスFT-SE(100種)指数

5月の欧州株式市場は上昇した。米国による対欧州関税を巡る懸念の後退に加え、欧州においてもAI関連企業の業績拡大期待や、中東情勢を巡る緊張緩和期待が投資家心理の改善につながり、市場は堅調に推移した。国別では、オランダ、オーストリア、ベルギーなどが上昇し、ポルトガル、ノルウェーが下落した。セクターでは、情報技術、一般消費財・サービス、素材などが上昇し、エネルギー、公益事業、不動産が下落した。

5月の香港株式市場

香港ハンセン指数

5月の香港株式市場は下落した。中旬には米中首脳会談を受けて半導体規制の緩和期待が高まり、関連銘柄を中心に上昇した。一方で、米国の長期金利上昇が投資家心理の重しとなった。その後、中東情勢を巡る緊張緩和への期待が高まったものの、中国当局による金融市場規制強化への警戒感などから利益確定売りが優勢となり、軟調な展開となった。国別では、韓国、台湾、タイなどが上昇し、インドネシア、中国、香港などが下落した。セクターでは、情報技術、資本財・サービスが上昇し、エネルギー、生活必需品、コミュニケーション・サービスなどが下落した。

6月の米国株式市場

6月の米国株式市場は、上昇を予想する。エネルギー価格の高止まりや金利上昇が重石となるものの、米国経済が堅調さを維持するなか、半導体などを中心としたAI設備投資関連銘柄や生産性向上が利益成長を支える展開が継続し、底堅い推移を予想する。

6月の欧州株式市場

6月の欧州株式市場は、上昇を予想する。エネルギー価格の高止まりや金利上昇による経済への影響が懸念されるものの、堅調な企業業績動向やドイツを中心とした財政拡張政策に支えられて、底堅い展開を予想する。

6月の香港株式市場

6月の香港株式市場は、上昇を予想する。エネルギー価格の高止まりや金利上昇による経済への影響が懸念されるものの、半導体などのAI設備投資関連銘柄などの業績拡大が期待され、底堅い展開を予想する。

為替動向

5月のドル/円相場

為替(ドル/円)

5月のドル/円相場は、日本の財政悪化懸念や米国の長期金利の上昇などから、ドルが上昇した。

前半、政府・日銀の為替介入などから、一時155円程度まで下落した。中旬、米CPI(消費者物価指数)や米PPI(生産者物価指数)が予想を上回り米国の長期金利が上昇すると、上昇基調となった。さらに、日本の補正予算に関する議論が活発化すると、財政悪化懸念などから円が売られる展開となり、上げ幅を拡大した。後半にかけては、中東情勢をめぐって米国とイランの和平協議進展への期待が高まる一方、引き続き財政悪化懸念からの円売りなどから方向感に欠ける展開となり、月末は159円台前半となった。

5月のユーロ/ドル相場

為替(ドル/ユーロ)

5月のユーロ/ドル相場は、米国の長期金利が上昇する一方、ドイツの長期金利が低下するなか下落し、月末は1.16ドル台後半となった。

5月のユーロ/円相場

為替(ユーロ/円)

5月のユーロ/円相場は、ユーロ高円安となった。ドルに対して円・ユーロは下落したものの、円の下落幅が大きくなったため、ユーロ高円安となり、月末は185円台後半となった。

6月のドル/円相場

6月のドル/円相場は、中東情勢の不透明感や日本の財政悪化懸念は上昇要因となるものの、日銀による利上げが下落要因となることから、下落すると予想する。

6月のユーロ/ドル相場

6月のユーロ/ドル相場は、欧米ともに金利は上昇を見込んでいるものの、ECB(欧州中央銀行)が先行して利上げを開始するとの見方から、ユーロの上昇を予想する。

6月のユーロ/円相場

6月のユーロ/円相場は、小幅下落を予想する。ドルは円・ユーロに対して下落するが、円に対する下落幅の方が大きくなるため、ユーロ/円は下落を予想する。

虫眼鏡

人ではなく、仕組みに頼るということ—— 『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』から考える

アンドリュー・S・グローブ『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は、単なるマネジメント理論の解説書というよりも、特定の時代と産業の現場から生まれた実践の記録として読むことで、その特徴がより鮮明に見えてくる一冊です。

本書の背景には、ピーター・ドラッカーのマネジメント思想があります。
組織は成果によって評価されること、そしてマネージャーの役割は、人を管理することではなく、成果を生み出す環境を整えることにある――そうした考え方は、ドラッカーの理論とも深く通じています。

一方で、本書の特徴は、その理論を説明することよりも、半導体産業という極めて競争の激しい現場において、どのように具体的な運営へ落とし込んだかを示している点にあります。

日本では、岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が、ドラッカーの思想を身近な物語として紹介した書籍として広く読まれました。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は、ある意味で、その企業経営版とも言えるかもしれません。理論を理解するだけでなく、それを日々の意思決定や組織運営の中で機能させることの難しさと重要性が、具体的に描かれています。

本書が著された1980年代、半導体産業は技術革新のスピードが極めて速い時代にありました。判断の遅れが、そのまま企業の競争力を左右する環境です。
そうした状況の中で、インテルのCEOであった著者が追求したのは、優れた個人の能力に依存する経営ではなく、組織が継続的に成果を生み出す「仕組み」をどのように設計するか、という点だったのではないでしょうか。

印象的だったのは、会議や1on1、指標管理といった日常的な活動を、単なる管理業務ではなく「生産活動」と捉えている点です。
マネージャーの成果は、自身の仕事量ではなく、部下やチーム全体のアウトプットによって測られる――この視点に立つと、報告や対話は負担ではなく、組織の認識を揃え、意思決定の質を高めるための重要なプロセスとして位置づけ直されます。

こうした仕組みづくりは、生産性向上のための工夫であると同時に、組織が現実を見誤らないための装置でもあるように感じられました。
情報が特定の階層に滞ることなく共有され、問題が早い段階で可視化されれば、組織は自らの状態を修正し続けることができます。
ガバナンスとは、単に行動を縛るものではなく、組織が健全に学び続けるための基盤でもある――本書を通じて、そのような視点を改めて考えさせられました。

日本の組織では、しばしば優秀な個人の努力や献身によって困難が乗り越えられます。
しかしその一方で、特定の人材への依存は、組織の脆さにもつながります。
人の能力だけに頼るのではなく、人が安心して力を発揮できる仕組みを整えること。
それこそが、本書が提示している重要なテーマなのかもしれません。

もちろん、1980年代のアメリカ企業と現代日本の組織環境には大きな違いがあり、本書の方法論をそのまま適用することは容易ではありません。
それでも、不確実性の高い状況において、組織が現実を正しく把握し、素早く修正できる状態をつくるという発想は、現代においても大きな示唆を与えてくれます。

人ではなく、仕組みに頼ること。
そして、組織が学び続けられる環境を設計すること。
本書が投げかける問いは、今もなお、多くの組織に向けられているように思います。

※本コラムは、執筆者個人の読書を通じた所感・考察をまとめたものです。

(書籍のご紹介)
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント』
アンドリュー・S・グローブ(著)/小林 薫(訳)
ISBN:9784822255015
発行日:2017年1月16日
発行元:日経BP