主なポイント
今月は主要中央銀行の金融政策決定会合が開かれます。米国、欧州では政策金利が据え置かれる見込みです。米国ではトランプ大統領が公然と利下げを求めていますが、パウエルFRB(連邦準備理事会)議長は先月下旬の議会証言で、利下げは「急ぐ必要はないと考えている」と述べています。欧州では先月のECB(欧州中央銀行)理事会後にラガルド総裁は「利下げサイクルは終わりに近づいている」との見解を示しています。日本では、先月の金融政策決定会合における参加者の主な意見では、関税をはじめとした不確実性への言及が多くみられ、今月の会合では政策金利は現状維持とされる見込みです。
7/9 |
(米)相互関税上乗せ停止期限・・・米政府の判断に注目 |
7/20 |
(日)参議院選挙・・・与党が過半数を維持できるか |
7/24 |
(欧)ECB理事会・・・現状維持が見込まれる |
7/29 |
(米)FOMC(連邦公開市場委員会)(30日まで)・・・現状維持が見込まれる |
7/30 |
(日)金融政策決定会合(31日まで)・・・現状維持が見込まれる |
市場見通し
- 国内債券
-
米国の関税政策による国内景気下押し懸念が低下要因となる一方、日銀の利上げ継続の姿勢や中長期ゾーンの需給悪化などが上昇要因となり、金利は小幅上昇すると予想する。
- 国内株式
-
業績見通しの不透明感が強く、日米関税交渉の結果次第でもう一段の悪化も想定される。米経済が減速するなか、下落を予想する。
- 外国債券
-
<米国>関税引き上げによるインフレ懸念は金利上昇要因となるものの、米国景気の減速が懸念されることなどから、金利は小幅低下を予想する。
<欧州>ドイツの財政拡大による景気回復期待は上昇要因となるものの、米国の関税引き上げに伴う不透明感などが低下要因となり、金利は小幅低下を予想する。
- 外国株式
-
<米国>トランプ関税の影響により業績見通しは下方修正が進んだものの、増益基調は維持しており、AIの需要増加やドル安の恩恵を受ける情報技術セクターなどを中心に業績拡大が見込まれ、小幅な上昇を予想する。
<欧州>ECBによる緩和的な金融政策、防衛・インフラなどの財政政策が景気を支えるとみられ、米国一極集中からの分散による資金流入が期待されることから、小幅な上昇を予想する。
- 為替市場
-
米国景気の減速により米長期金利が低下することなどから、ドルは対円で下落を予想する。ECBの利下げが終盤に差し掛かっていることや、米国景気の減速懸念などから、ユーロは対ドルで小幅上昇を予想する。
出所:Bloomberg
国内債券
6月の国内債券市場
6月の国内長期金利は、中東情勢の緊迫化を受けたリスク回避の動きや、米国金利の低下などを受けて低下し、1.430%で終了した。
国内長期金利は、月半ばにイスラエルのイラン攻撃を受けたリスク回避の動きから、一時1.4%程度まで低下した。その後は、イランとイスラエルが完全停戦に合意したとの報道や、日米の株価上昇などを受けてリスク回避姿勢が和らぎ、月末にかけてはやや上昇し、1.430%で終了した。
イールドカーブについては、中東での地政学リスクなどを受けて中長期ゾーンの金利が低下し、スティープ化した。信用スプレッドは、小幅低下した。
7月の国内債券市場
7月の国内長期金利は、米国の関税政策による国内景気下押し懸念が低下要因となる一方、日銀の利上げ継続の姿勢や中長期ゾーンの需給悪化などが上昇要因となり、小幅上昇すると予想する。7月の債券市場のポイントは、①国内債券市場の需給動向、②日銀の動向、③米国金利の動向と考える。
①<国内債券市場の需給動向>7月の国債入札スケジュールとしては、10年債(1日)、30年債(3日)、20年債(10日)、40年債(23日)などが予定されている。超長期債の投資家需要の低迷を受けて、財務省は7月から20~40年債の発行減額を決定した。そのため、超長期債の需給は安定するとみられるが、7月は参議院選挙があり、選挙の動向が入札に影響を与える可能性に注意したい。各党の物価高対策などを受けて財政支出拡大への懸念が高まれば、投資家需要の低迷から金利の変動幅が大きくなることが考えられる。
②<日銀の動向>日銀の金融政策決定会合は7月30~31日の日程で開催され、31日には展望レポート(経済・物価情勢の展望)が公表される。日銀は、米国の相互関税が国内景気を下押しする一方、人手不足などの構造的要因から、賃金と物価の上昇が続くと見込んでおり、利上げ継続の姿勢を維持している。足元では賃金上昇の動きを反映してサービス価格の伸びが高まってきており、展望レポートで物価見通しを上方修正することになれば追加の利上げ織り込みが急速に進み、金利上昇余地を試す展開になることが考えられる。
③<米国金利の動向>米国金利について、市場はFRB(連邦準備理事会)が年後半にかけて0.5%程度の利下げを行うことを予想している。ただし、相互関税導入による景気やインフレへの影響は見通しにくく、金融政策を巡る思惑から米国長期金利の変動幅が大きくなり、国内金利に波及することが考えられる。また、減税政策を巡る財政拡大への懸念が米国の超長期金利を押し上げ、その動きが国内金利に波及することも考えられる。
イールドカーブは、フラット化すると予想する。信用スプレッドは、横ばいを予想する。
国内株式
6月の国内株式市場
6月の国内株式市場は、日米関税交渉の長期化による業績見通しの不透明感や、中東情勢の緊迫化により下落する局面がみられたものの、米中間の関税交渉が一定の合意に至ったことや、海外半導体企業の堅調な業績などが追い風となり、日経平均株価で6.64%の上昇となった。
上旬は、トランプ大統領による鉄鋼・アルミ関税引き上げや、労働市場の減速を示唆する米雇用関連指標が相場の重荷となったが、中国のレアアース輸出規制を巡る米中間協議進展への期待から、一進一退で推移した。中旬には、イスラエルによるイラン本土への攻撃で一時的に売られたものの、米中間の関税協議の合意や海外半導体企業の好調な月次売上高などから景気見通しへの過度な懸念が後退し、値を戻した。下旬には、中東情勢の緊張緩和に向けた期待が膨らんだほか、米消費者信頼感指数の低下などによりFRB(連邦準備理事会)の早期利下げ観測が高まり、半導体関連などのグロース株主導で上昇した。業種別には、その他製品、証券、機械などが上昇し、輸送用機器、海運、ゴムなどが下落した。
7月の国内株式市場
トランプ関税が4-6月期業績へ与える影響は限定的とみられるが、通期見通しの不透明感は強く、外需関連企業については日米関税交渉の結果次第で、もう一段の悪化も想定される。設備投資や消費関連などで需要が堅調な分野はあるものの、米経済の減速感から上値は重く、下落を予想する。
7月は9日にトランプ政権が課した相互関税の上乗せ分の猶予期限を迎え、20日には参議院選挙が行われる。米株式市場ではハイテク企業の好業績やFRBの利下げ期待が追い風だが、日本では対米関税交渉で米国側の大幅な譲歩を引き出すことが難しい上、参議院選挙で野党勢力が拡大した場合は財政支出拡大への懸念も膨らむことから、企業業績の悪化や金利上昇への警戒が株式市場への下押し圧力となることを想定する。
上旬は、小売企業を中心に3-5月期の決算発表が集中する。物価上昇の影響もあり、小売各社の既存店売上は堅調に推移しているが、売上の伸び以上に人件費等のコスト上昇圧力が強く、収益率の維持が難しい環境が続いている。各社共、PB商品の開発やDX投資など生産性の向上に向けた施策を打ち出しているが、これらの実効性について見極める必要があるだろう。また、下旬から4-6月期の決算発表が本格化し、輸出関連企業の業績では、既に発動されているトランプ関税の影響が明らかになる。各社とも関税発動前に在庫を積み増すなど一定の対応を行っており、実績への影響は限定的と予想するが、6月の日米首脳会談で妥結が期待されていた関税交渉は継続協議となり、業績見通しの不透明感は一層強まっている。但し、外需のなかには世界的な防衛費増額の動きやAI関連への堅調な需要などから伸びが期待できる分野もあり、輸出関連銘柄については、関税の影響を抑えるだけでなく、いかにこれらの新たな需要を取り込む成長戦略を打ち出すかに注目したい。
外国債券
6月の米国債券市場
6月の米国の長期金利は、米国景気の減速懸念などからFRB(連邦準備理事会)の利下げ観測が高まったことなどを受け、低下した。
月初、5月の雇用統計が底堅い結果となると、一時4.5%程度まで上昇する場面もあったが、CPI(消費者物価指数)が予想を下回ったことや、中東情勢の緊迫化から低下に転じた。中旬に行われたFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利は維持されたものの、米国景気の見通しが下方修正されると下げ幅を拡大する展開となった。下旬にかけても低下余地を探る展開となり、月末は4.2%台前半となった。イールドカーブは、ほぼ変わらずとなった。
6月の欧州債券市場
6月の欧州(ドイツ)の長期金利は、財政拡大による欧州景気の回復期待や、防衛費増加による財政悪化懸念などから、上昇した。
月初、米国の長期金利が底堅い雇用統計などを受けて上昇基調になると、ドイツの長期金利にも上昇圧力がかかった。中旬、中東情勢の不透明感が高まったことなどから上げ幅を縮める場面もあったが、NATO(北大西洋条約機構)が、防衛費の目標をGDP比5%まで引き上げると、財政悪化懸念などから上げ幅を拡大し、月末は2.6%程度となった。
ドイツ国債のイールドカーブはスティープ化した。周辺国国債とドイツ国債の利回り差は、ECB(欧州中央銀行)が量的引き締めを継続するなか、イタリアなどを中心に縮小した。
7月の米国債券市場
7月の米国の長期金利は、関税引き上げによるインフレ懸念は金利上昇要因となるものの、米国景気の減速が懸念されることなどから、小幅低下を予想する。
7月の欧州債券市場
7月の欧州(ドイツ)の長期金利は、ドイツの財政拡大による景気回復期待は上昇要因となるものの、米国の関税引き上げに伴う不透明感などが低下要因となり、小幅低下を予想する。ECBが量的引き締めを継続しているものの、一部の国の財政悪化懸念の後退などから、周辺国の対ドイツ国債スプレッドは横ばいで推移すると予想する。
外国株式
6月の米国株式市場
6月の米国株式市場は、S&P500指数で4.96%の上昇となった。レアアースの輸出規制を巡る米中間協議で一定の合意が得られたことが好感されて底堅く推移した。その後は、イスラエルのイラン本土への攻撃により、一時的に売られる局面もみられたものの、情報技術銘柄の好調な企業業績に支えられたほか、イランとイスラエルの停戦合意報道やFRB(連邦準備理事会)による早期利下げ観測の高まりから一段高となり史上最高値を更新した。セクターでは、情報技術、コミュニケーション・サービス、エネルギーなどが上昇する一方、生活必需品、不動産が下落した。
6月の欧州株式市場
6月の欧州株式市場は下落した。上旬は、ECB(欧州中央銀行)による利下げや米中貿易交渉の進展期待を背景に上昇した。その後は、イスラエルのイラン本土への攻撃による中東情勢の緊迫化を受けて軟調な展開となったが、停戦合意報道やFRBの早期利下げ観測の高まりにより反発した。国別では、ポルトガル、ノルウェー、スウェーデンなどが上昇し、ベルギー、デンマーク、スイスなどが下落した。セクターでは、エネルギー、公益事業、情報技術が上昇し、生活必需品、一般消費財・サービス、ヘルスケアなどが下落した。
6月の香港株式市場
6月の香港株式市場は上昇した。地政学的リスクの高まりから売られる局面もあったが、IPO市場が活況のなか、米中間の関税を巡る対立の緩和期待などから情報技術銘柄主導で上昇した。国別では、新大統領の政策期待から韓国が大きく上昇し、次いで台湾、香港が上昇する一方、インドネシア、タイなどが下落した。セクターでは、情報技術、資本財・サービス、素材などが上昇し、一般消費財・サービス、生活必需品が下落した。
7月の米国株式市場
7月の米国株式市場は、小幅な上昇を予想する。米国経済は減速の兆しを見せつつも、景気後退入りは回避するとみている。トランプ関税の影響により、業績見通しは下方修正が進んだものの、増益基調は維持しており、AIの需要増加やドル安の恩恵を受ける情報技術セクターなどを中心に業績拡大が見込まれ、小幅な上昇を予想する。
7月の欧州株式市場
7月の欧州株式市場は、小幅な上昇を予想する。米欧貿易交渉などの関税動向が短期的にボラティリティを高める可能性があるものの、ECBによる緩和的な金融政策、防衛・インフラなどの財政政策が景気を支えるとみられ、米国一極集中からの分散による資金流入が期待されることから、小幅な上昇を予想する。
7月の香港株式市場
7月の香港株式市場は、小幅な上昇を予想する。中国政府による内需促進策などの財政支援と緩和的な金融政策が景気の支えとなるほか、大型のハイテクセクターの業績回復が期待されることや、割安なバリュエーションから小幅な上昇を予想する。
為替動向
6月のドル/円相場
6月のドル/円相場は、米国の長期金利が低下したものの、日銀の追加利上げ観測が後退したことなどから、小幅上昇となった。
月初、5月の雇用統計が底堅い結果となり、米国の長期金利が上昇基調となると、緩やかに上昇する場面もあったが、米CPI(消費者物価指数)が弱い結果となったことなどから下落に転じた。中旬、日銀が金融政策を維持したものの、追加利上げに慎重な姿勢を示したことから再び上昇に転じた。その後、イランに対してアメリカが空爆を行うなど中東での緊張が一層高まると、ドルが買われる展開となり、一時148円程度まで上昇したが、イランとイスラエルが停戦に合意したことや、米国長期金利の低下を受けて上げ幅を縮小し、月末は144円台前半となった。
6月のユーロ/ドル相場
6月のユーロ/ドル相場は、米国の長期金利の低下などからユーロが買われる展開となり、月末は1.17ドル台前半となった。
6月のユーロ/円相場
6月のユーロ/円相場は、ユーロ高円安となった。ドルに対して円は下落、ユーロは上昇したことから、ユーロ高円安となり、月末は169円台半ばとなった。
7月のドル/円相場
7月のドル/円相場は、米国景気の減速により米長期金利が低下することなどから、下落を予想する。
7月のユーロ/ドル相場
7月のユーロ/ドル相場は、ECB(欧州中央銀行)の利下げが終盤に差し掛かっていることや、米国景気の減速懸念などから、ユーロは小幅上昇を予想する。
7月のユーロ/円相場
7月のユーロ/円相場は、上昇を予想する。ドルは円・ユーロに対して下落するが、ユーロに対する下落幅の方が大きくなるため、ユーロ/円は小幅上昇を予想する。
虫眼鏡
令和のコメ騒動と随時契約による備蓄米での対応
昨年から、日本人の‘生活の糧’といえるコメの価格が高騰しました。今年3月に政府は、備蓄米を放出しましたが、ほとんど効果がみられず、価格は上昇を続けました。こうした中で、起用された小泉農林水産大臣は、小売店への直接販売をする随時契約を導入したことなどから、ようやくコメ価格が低下し始めています。今回は、皆さんの関心が高い‘コメ’をテーマとしてみました。
■コメ価格の高騰と新しい流通経路の備蓄米
一般的に、消費者が購入する5kg当たりの全国スーパー平均価格をみていきましょう。
2022年~2024年春までは、概ね2,000円前後で安定していましたが、昨年の夏頃から急速に上昇し始めて、今年5月には4,300円近くまで高騰しました。実に、1年間で2倍以上となっており、国民の不満が高まるのも当然ともいえるでしょう。まさに、令和のコメ騒動という言葉が、この状況を物語っていると思います。
今回のコメ価格の高騰の理由は様々ですが、主に3つが指摘されています。
①複雑な流通構造による市場の混乱
②異常気温による収穫量・品質の低下
③農業人口の減少などによる供給能力の低下
3つとも、それぞれの対策が必要といえますが短期間で見直しが可能なのが、①の流通経路、でしょう。コメ価格の急騰の中で、農林水産大臣に起用された小泉氏は、即時に①の複雑な流通構造の改善に着手し、放出する備蓄米について、一般入札方式から、政府から小売店へ直接販売する随時契約に変更しています。具体的には、大規模な小売業者、次いで中小スーパー、米穀店などとの直接交渉による販売であり、中間業者と呼ばれる卸などは経由しません。これにより、備蓄米が迅速に消費者に行き渡りやすくなるほか、流通コストの削減に伴う価格低下も実現されます。
■日本のコメ需要と備蓄米の役割
日本の1年間のコメ需要量は、概ね700万トン程度であり、非常時のために蓄えられる備蓄米は、約100万トン(2025年3月末在庫96万トン)とされています。これは10年に1度の不作、もしくは不作が2年連続して起きたとしても対応できる量といわれています。
保存期間は5年(2020年産~2024年産)であり、新米の出荷後に約20万トンずつ置き換わることになります。5年超えた備蓄米は、「飼料用」として売却されるほか、学校給食、こども食堂などへ無償提供されています。
因みに、今は2025年産が本格出荷される前ですので、2024年産が新米、2023年産が古米、2022年産が古古米、2021年産が古古古米、そして2020年産が古古古古米となります(実は、明確な定義が定められていませんが、米穀年度に基づくと、11月から2024年産は古米となります)。基本的には、古いほど価格が安くなっていきます。
コメ不足による価格高騰を受けて、政府は今年3~4月に競争入札方式で31万トン(24年産17万トン、23年産14万トン)を放出しました。6月8日までにJA全農などの集荷業者から卸売業者に引き渡されたのは全体の半分に当たる約15.9万トン、実際に小売市場に届いたのは、約9.2万トンであり、緊急対応でコメを消費者へ届けるときに、時間がかかるという課題が浮き彫りとなったといえます。
■随時契約の備蓄米がコメ価格へ与える影響
さて、初回の随時契約の備蓄米30万トン(22年産20万トン、21年産10万トン)ですが、5月26日に申し込みが開始し、5日後の5月31日には店頭販売が行われています。店頭価格は、バラツキはありますが、5キロ2,100円台が多く、高騰前の水準となっています。売れ行きは好調なことに加え、精米が追いつかないこともあり、1ヵ月たった今でも、手に入りにくい状況が続いています。
さらに、小泉大臣は、6月10日に追加で備蓄米を20万トン(21年産10万トン、20年産10万トン)の放出を公表しています。まずは21年産10万トンと、初回の放出でまだ未契約の同年産2万トンの計12万トン分を対象とし、完売後に20年産も放出する見込みです。店頭価格については、21年産1,800円程度、20年産1,700円程度と示唆しており一段と下がる見込みです。また、20日からは小売業者だけでなく、中食・外食業者や給食事業者に対象を広げています。
こうした迅速な対応により、ようやくコメ価格が下がり始めています。農林水産省が毎週公表している全国スーパー1,000店舗の平均コメ価格(6月16−22日)は、5kg3,801円であり、2週連続で4,000円割れなりました。銘柄米は高止まりとなっていますが、備蓄米を含むブレンド米が大きく下がっているのが理由です。石破総理が国会で発言した「コメ価格3,000円台」は、早期に実現したことになります。
9月からは新米が出荷されてくることから、備蓄米は8月までに販売することが、小売業等が買い入れする際の条件となっていることもあり、品切れが続く備蓄米を手に入れるのは、簡単ではないかもしれません。ただし、精米能力の問題などから備蓄米の出荷が遅れており、販売延長など対策が取られる必要もありそうです。また、小泉大臣は、備蓄米を放出後には、海外から非課税で輸入しているミニマムアクセス米の活用も可能と述べています。秋以降に新米が本格的に出荷された後も、コメの需給の改善が見られないようであれば、カルフォルニア産などの低価格の輸入米が、本格的に市場に出回ることも考えられます。一つ確かなことは、備蓄米や輸入米に限らず、多くの国民は低価格のコメを求めていることでしょう。
今回の小泉大臣の流通経路の見直しによる運営は、国民から高い評価がある一方で、コメ問題については多くの課題があります。近年の気候変動や農家の高齢化が進む中で、制度改正を伴う国内農家の育成はもとより、米国との間で、関税や輸入枠に関する交渉をどのように進めるかも重要です。令和の米騒動を契機に、食糧安全保障をベースとして、農業改革が進展していくことが望まれます。
※環境省サイトでは「暑さ指数」が2010年から公表されている。
※環境省サイトでは「暑さ指数」が2010年から公表されている。
※環境省サイトでは「暑さ指数」が2010年から公表されている。