主なポイント
16日に1-3月期GDPが発表されます。10-12月期は前期比年率+2.2%と、3四半期連続のプラス成長となりましたが、1‐3月期は前期に大きく落ち込んだ輸入が大幅増となる影響などから、マイナスとなる可能性があります。内需については拡大が見込まれますが、外需のマイナスを補えるほどには強くないでしょう。4-6月期は、米国による関税賦課の影響がどの程度となるか、4月分以降の月次の経済指標が注目されます。
5/13 |
(米)4月CPI・・・高い伸びが継続か |
5/16 |
(日)1‐3月期GDP・・・上記参照 |
5/23 |
(日)4月全国CPI・・・高い伸びが継続か |
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米国との関税に関する協議の進展 |
市場見通し
- 国内債券
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日銀による追加利上げ観測の後退などが低下要因となるものの、財政拡大への懸念などが上昇要因となり、金利は横ばいで推移すると予想する。
- 国内株式
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トランプ政権の政策が世界経済に与える影響が懸念されるが、政府、企業で対応が進み、一進一退の展開を予想する。
- 外国債券
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<米国>FRB(連邦準備理事会)が利下げを継続する姿勢を示しているものの、関税引き上げに伴うスタグフレーション懸念や、米国の信認低下が意識されることなどから、金利は小幅上昇を予想する。
<欧州>ドイツの財政拡大による景気回復期待は上昇要因となるものの、ECB(欧州中央銀行)が利下げを継続すると見込まれることや、米国の関税引き上げに伴う不透明感などが低下要因となり、金利は横ばいでの推移を予想する。
- 外国株式
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<米国>トランプ政権の政策の不確実性が継続するなか、1-3月期の企業業績は増益が予想されているものの、業績見通しへの警戒感が高まっており、上値の重い展開となるだろう。
<欧州>ドイツの財政政策の拡大期待や、ECBによる利下げが支えとなるものの、関税政策を巡る不確実性により、米国同様に企業業績見通しへの警戒感が高まっており、上値の重い展開となるだろう。
- 為替市場
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日銀の利上げ観測の後退はドル高要因となるものの、米国の信認低下が意識される展開が継続すると見込まれることから、ドルは対円で下落を予想する。トランプ政権の関税への懸念やECBの利下げ継続が見込まれることはユーロ安要因となるものの、米国の信認低下により、ユーロは対ドルで小幅上昇を予想する。
出所:内閣府
国内債券
4月の国内債券市場
4月の国内長期金利は、米国の相互関税に伴う景気減速懸念や金融市場の混乱により、日銀の追加利上げ観測が後退したことから低下し、1.310%で終了した。
国内長期金利は、月初に米国が発表した相互関税が世界的な景気減速を引き起こすとの懸念から、株価が大幅下落するなか、日銀の追加利上げ観測が後退したことで1.0%台半ばまで低下した。その後は、米国金利の上昇や米国の相互関税が90日間停止されるとの報道などを受け、1.3%台半ばに上昇した。月末にかけては、1.3%前後での横ばい推移が続き、1.310%で終了した。
イールドカーブについては、財政支出の拡大懸念などから超長期ゾーンの金利上昇幅が相対的に大きくなり、スティープ化した。信用スプレッドは、小幅に拡大となった。
5月の国内債券市場
5月の債券市場は、日銀による追加利上げ観測の後退や、米国の相互関税により国内景気に下押し圧力がかかることは低下要因になるものの、財政拡大への懸念などが上昇要因となり、横ばいで推移すると予想する。5月の債券市場のポイントは、①国内債券市場の需給動向、②日銀の動向、③米国金利の動向と考える。
①<国内債券市場の需給動向>5月の国債入札スケジュールとしては、10年債(8日)、30年債(13日)、20年債(20日)、40年債(28日)などが予定されている。生命保険会社(主要10社)が4月に公表した2025年度運用計画では国債の保有が削減される見込みとなるなど、投資家の強い需要は期待しにくい。月末の40年債入札にかけて超長期債の供給が続くことから、入札の結果によっては金利が大きく変動する可能性が考えられる。
②<日銀の動向>日銀は、利上げ継続の姿勢は維持するものの、米国の相互関税が国内景気へ与える影響が見通しにくいことなどから、日銀の追加利上げ観測が高まりづらい状況が継続するとみられる。ただし、米国の相互関税を巡る不確実性は高いものの、事態が急速に好転する可能性には注意が必要である。相互関税を巡って米国と中国などの対立が改善する場合は、追加の利上げ織り込みが急速に進み、金利上昇余地を試す展開になることが考えられる。
③<米国金利の動向>米国では、相互関税導入を受けて景気減速への懸念が高まっており、市場はFRB(連邦準備理事会)が年内1%程度の利下げを行うことを予想している。ただし、関税導入によりインフレ率が高まることが予想されるなか、FRBが政策金利を当面据え置くことも予想される。金融政策の見通しを巡る思惑から、米国長期金利の変動幅が大きくなり、国内金利に波及することが考えられる。
イールドカーブは、スティープ化すると予想する。信用スプレッドは、小幅拡大を予想する。
国内株式
4月の国内株式市場
4月の国内株式市場は、トランプ政権が大規模な関税導入を発表し、世界的な景気後退への懸念から急落したものの、その後は米関税政策への修正期待から値を戻し、日経平均株価で1.20%の上昇となった。
上旬は、トランプ大統領が想定を上回る相互関税を発表し、中国政府も報復措置として米国からの輸入品への追加関税で応じたことから、世界経済の後退リスクが意識され、素材関連株や日銀の利上げ期待が剥落した銀行株などが大幅に下落した。中旬には、金融市場の不安定な動きから乱高下しながらも、トランプ大統領が相互関税の一時停止を発表したことにより徐々に戻り基調となり、日米関税協議の進展への期待も株価を支えた。下旬にかけては、中央銀行の独立性が揺らぐFRB(連邦準備理事会)議長の解任をトランプ大統領が否定し、ドル資産の買い戻しから円高傾向が一服したことを受けて、月初の関税発表以降下落幅が大きかった銘柄を中心に上昇した。業種別には、その他製品、建設、小売などが上昇し、石油・石炭、鉱業、銀行などが下落した。
5月の国内株式市場
トランプ政権の政策が世界経済に与える影響が懸念されることに加え、配当の権利落ちなどによる短期的な需要の減少が見込まれる。決算発表シーズンに向けて2025年度業績への期待が下支えとなるものの、下落を予想する。トランプ政権の政策が世界経済に与える影響が懸念され、2025年度の業績ガイダンスは外需関連企業を中心に減益となることも想定されるが、バリュエーションに割高感はなく、政府、企業で米関税政策への対応が進むことから、一進一退の展開を予想する。
トランプ政権の相互関税導入による景気後退やインフレリスクへの警戒が続く一方で、各国との通商交渉の進展に伴い、米国内への投資が促進され、相手国の関税引き下げにより米国経済の落ち込みは限定的となるシナリオも考えられる。朝令暮改の政策が世界経済へ与える影響は予測が困難で、ボラティリティの高い展開が続くだろう。
1‐3月期の決算発表が4月下旬から本格化している。2025年度の業績見通しについては、活発な国内向けIT・設備投資の恩恵を受ける企業を中心に増益計画となる一方、輸送用機器セクターなど外需関連企業は、前提為替レートを前年度対比で円高に設定したことなどから減益計画が目立つ。そのなかでも、株主還元策の拡充を発表した銘柄は株価が堅調に推移するケースも見られており、5月上旬まで続く決算シーズンを通して、この傾向は続くだろう。米国の関税については、最終的な関税率や適用時期が見通せない上、追加で発生するコストをサプライチェーンのどの段階で負担するのか、または最終製品に価格転嫁をするのかによって影響が異なり、業績予想への織り込みは各社各様となっている。
現状の株価水準に割高感はないものの、当面は業績予想の確度の低さがバリュエーションへの重荷となることを想定する。上場各社には、今後の通商環境の変化への適切な対応と、業績への影響について迅速な開示を期待したい。
外国債券
4月の米国債券市場
4月の米国の長期金利は、金融市場の混乱への警戒感から乱高下した後、米国景気の減速懸念などから低下した。
月初、トランプ政権が相互関税を発表すると米国景気の減速懸念などから、一時3.8%台半ばまで低下したが、その後、米国の信認低下が懸念されたことで、米国資産が売られる展開となり、4.5%台後半まで急上昇した。金融市場の混乱を受けて、トランプ大統領が相互関税の90日間の一時停止を発表すると、金融市場は徐々に落ち着きを取り戻したが、再度米国景気の減速が意識されたことから、金利は低下する展開となり、月末は4.1%台半ばとなった。
イールドカーブは、関税引き上げによるインフレへの影響が懸念されたことなどから、スティープ化した。
4月の欧州債券市場
4月の欧州(ドイツ)の長期金利は、米国の関税政策により欧州景気に下押し圧力がかかるとの見方などから、低下した。
月初、トランプ政権が相互関税を発表すると、欧州景気に下押し圧力がかかるとの懸念などから、低下基調となった。米国の長期金利が乱高下し、米国の信認低下が懸念される展開となると、欧州に資金が流入するとの見方などから、低下幅を拡大した。その後も低位での推移となり、月末は2.4%台半ばとなった。
ドイツ国債のイールドカーブは、スティープ化した。周辺国国債とドイツ国債の利回り差は、ECB(欧州中央銀行)が量的引き締めを継続するなか、ほぼ横ばいでの推移となった。
5月の米国債券市場
5月の米国の長期金利は、FRB(連邦準備理事会)が利下げを継続する姿勢を示しているものの、関税引き上げに伴うスタグフレーション懸念や、米国の信認低下が意識されることなどから、金利は小幅上昇を予想する。
5月の欧州債券市場
5月の欧州(ドイツ)の長期金利は、ドイツの財政拡大による景気回復期待は上昇要因となるものの、ECB が利下げを継続すると見込まれることや米国の関税引き上げに伴う不透明感などが低下要因となり、金利は横ばいでの推移を予想する。ECBが量的引き締めを継続していることや、一部の国の財政悪化などが懸念されるものの、ECBによる利下げ継続が予想されることから、周辺国の対ドイツ国債スプレッドは横ばいで推移すると予想する。
外国株式
4月の米国株式市場
4月の米国株式市場は、S&P500指数で0.76%の下落となった。トランプ政権が予想を上回る相互関税を発表し、中国が即座に報復関税を表明したことにより、世界的な景気後退への懸念が高まり大幅な下落となった。長期金利の上昇、ドル安も重なり、米国からの資金流出が懸念されるなか、関税発動の90日間の延期や各国との相互関税を巡る交渉の進展期待に加え、予想を上回る1-3月期の企業業績発表が好感され買い戻しが進み、下落幅を縮小した。セクターでは、情報技術、生活必需品、コミュニケーション・サービスなどが上昇する一方で、エネルギー、ヘルスケア、素材などが下落した。
4月の欧州株式市場
4月の欧州株式市場は下落した。トランプ政権が予想を上回る相互関税を発表し、景気後退への懸念から米国同様に急落した。その後、関税発動の90日間の延期やECB(欧州中央銀行)の利下げのほか、1-3月期の企業業績発表などが好感されて反発し、下落幅を縮小した。国別では、ポルトガル、ドイツ、ベルギーなどが上昇し、オーストリア、デンマーク、ノルウェーなどが下落した。セクターでは、不動産、公益、生活必需品などが上昇する一方、エネルギー、一般消費財・サービス、ヘルスケアなどが下落した。
4月の香港株式市場
4月の香港株式市場は下落した。米国の相互関税の発表後に、中国政府が米国に対し報復関税を即座に表明したことで、景気後退が懸念されて急落した。その後は、中国政府の景気刺激策への期待が支える局面もあったが、米中両国間の交渉の停滞が懸念されるなか、戻りの鈍い展開となった。
5月の米国株式市場
5月の米国株式市場は、小幅な下落を予想する。トランプ政権の政策の不確実性が継続するなか、米国市場からの資金流出のほか、貿易戦争の激化を背景とした景気悪化への懸念が高まっている。1-3月期の企業業績は増益が予想されているものの、業績見通しへの警戒感が高まっており、上値の重い展開となるだろう。
5月の欧州株式市場
5月の欧州株式市場は、小幅な下落を予想する。ドイツの財政政策の拡大期待や、ECBによる利下げが支えとなるものの、関税政策を巡る不確実性により、米国同様に企業業績見通しへの警戒感が高まっており、上値の重い展開となるだろう。
5月の香港株式市場
5月の香港株式市場は、小幅な下落を予想する。中国政府の緩和的な金融政策の継続や、財政政策の期待が支えとなるものの、米国の関税政策が景気や企業業績に与える影響が懸念され、上値の重い展開となるだろう。
為替動向
4月のドル/円相場
4月のドル/円相場は、日銀の追加利上げ観測の後退や、米国の信認低下が懸念されたことなどから、下落した。
月初、トランプ政権が相互関税を発表すると、金融市場の混乱を受けて、日銀による追加利上げ観測が後退し、日本の長期金利が急低下したことで、一時144円台半ばまで下落した。その後、米長期金利が上昇基調となるなか、148円程度まで値を戻す場面もあったが、海外投資家による米国資産売りが意識されるなか、再び下落基調となり、139円台後半まで下落した。月末にかけてはやや値を戻し、月末は142円台後半となった。
4月のユーロ/ドル相場
4月のユーロ/ドル相場は、米国経済の減速や、米国の信認低下が意識されるなか、ユーロが買われる展開となり、月末は1.13ドル台後半となった。
4月のユーロ/円相場
4月のユーロ/円相場は、ユーロ高円安となった。ドルに対して円・ユーロは上昇したものの、ユーロの上昇幅が大きくなったため、ユーロ高円安となり、月末は162円台前半となった。
5月のドル/円相場
5月のドル/円相場は、日銀の利上げ観測の後退はドル高要因となるものの、米国の信認低下が意識される展開が継続すると見込まれることから、ドルは下落を予想する。
5月のユーロ/ドル相場
5月のユーロ/ドル相場は、トランプ政権の関税への懸念やECB(欧州中央銀行)の利下げ継続が見込まれることはユーロ安要因となるものの、米国の信認低下により、ユーロは小幅上昇を予想する。
5月のユーロ/円相場
5月のユーロ/円相場は、下落を予想する。ドルは円・ユーロに対して下落するが、円に対する下落幅の方が大きくなるため、ユーロ/円は小幅下落を予想する。
虫眼鏡
アラートとは不快指数のこと?
暑い夏が間近に迫ってきたので、今回は常々感じていた「熱中症警戒アラート」は「不快指数」のことなのか?を、調べてみました。
まず「不快指数」とは、温度と湿度で計算する蒸し暑さの指数で、1957 年にアメリカで発表されたそうです。計算式は「0.81×温度℃+0.01×湿度%×(0.99×温度℃-14.3)+46.3」で求められ、指数と体感は以下の通りとなります。
ややこしい計算ですが特別な設備が不要で、湿度や不快指数を表示するデジタル温度計も販売されており、かなり普及しているようです。しかし、不快指数の過去のデータはインターネット上にもあまり載っておらず、気象庁の公表する東京における日々の12 時時点の温度・湿度の過去データから計算してみました。下記の左側のグラフが「不快指数」です。
※環境省サイトでは「暑さ指数」が2010年から公表されている。
「不快指数」が80を超えた日は、2010年では6/28から9/22迄の間に55日でした。それが2023年は6/28から9/21迄に74日と約1.3倍になります。環境省のサイトでは2010年以降の「暑さ指数」が公表されているため、ここでは2010年と2023年の比較をしましたが、2000年に「不快指数」が80を超えた日は、6/30から9/17迄の間に48日でした。やはり暑さは以前よりも長く、厳しくなっているようです。
想像通りの暑さを示した「不快指数」ですが、「不快指数」というのは風速等が考慮されておらず、「熱中症警戒アラート」の発動は「暑さ指数」(WBGT湿球黒球温度)に基づいているそうです。「暑さ指数」とは、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標で、人体の熱収支(人体と外気との熱のやりとり)に与える影響の大きい湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、気温を取り入れたものだそうです。
「暑さ指数」は、以下の計算式で算出されますが、黒球温度とは、黒く塗装された銅板の球に温度計を入れて観測し(直射日光にさらされた球の中の平衡温度を観測、弱風時の日なたの体感温度)、湿球温度とは、水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測(皮膚の汗が蒸発する時の涼しさ)、乾球温度とは、通常の温度計による気温の観測したものです。
・屋外の算出方法「WBGT =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度」
・屋内の算出方法「WBGT =0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度」
前ページ右側のグラフは東京における日々の12時時点の「暑さ指数」ですが、28を超えたのは2010年に6/28から9/22迄の間に47日、それが2023年は6/28から9/28迄に延びて、71日、約1.5倍に増加しました。「不快指数」80超え、「暑さ指数」28超えは、「暑さ指数」は期間がやや長め、日数は「不快指数」の方が多い結果となりました。「不快指数」「暑さ指数」のグラフはかなり似ていて、個人では測定し難い「暑さ指数」ではなく、温度計などに表示される「不快指数」でも、安全・危険の指標として参考になりそうです。
最後に、「熱中症警戒アラート」とは何かというと、「県予報区内で、いずれかの暑さ指数情報提供地点の、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合に発表される」ものでした。「熱中症特別警戒アラート」は、「都道府県内全ての暑さ指数情報提供地点における、翌日の日最高暑さ指数が35(予測値)に達する場合等」に発表されます。「暑さ指数」35となると相当な暑さですが、「熱中症特別警戒アラート」は2024年6月に運用が開始されたものの、全国で2024年に1度もありませんでした。しかし、東京で「熱中症警戒アラート」が発表されたのは2022年に10回、2023年は26回、2024年は37回と増えており、いずれは「熱中症特別警戒アラート」も発表される日が来るかもしれません。
「暑さ指数」が28を超えると消防による熱中症搬送者が増えるそうで、特に「汗をかく体になっていない梅雨明け直後に厳しい暑さが続くこと」に注意が必要だそうです。これから暑さが本格化しますので、「アラート」、「不快指数」は80超え、「暑さ指数」は28超えにご注意ください。
【参考、データ】:環境省「熱中症予防情報サイト」、気象庁「過去の気象データ検索」、企業サイト