2024年10月-Vol.341
  • 概要
  • 国内債券
  • 国内株式
  • 外国債券
  • 外国株式
  • 為替動向
  • 虫眼鏡

主なポイント

今月は日銀の金融政策決定会合が開かれます。9月の決定会合では金融政策が据え置かれましたが、植田総裁が政策判断に当たっては「時間的な余裕がある」と述べたことから、早期利上げ観測が後退し円安が進みました。その後、自民党総裁選挙では、追加利上げを牽制していた高市氏ではなく、追加利上げに肯定的な発言をしていた石破氏が当選したことから、一転して円高となりました。ただし、石破氏は自民党総裁就任後は利上げに慎重な姿勢を示していることから、日銀による早期の追加利上げ観測は高まっていない状況です。日銀は引き続き経済データを見ながら追加利上げのタイミングを計っているものと思われ、決定会合における声明文や植田総裁の会見が注目されます。

10/8 (日)8月毎月勤労統計・・・現金給与総額が引き続き高い伸びとなるか
10/10 (米)9月CPI・・・伸び率の鈍化傾向が続くか
10/17 (欧)ECB(欧州中央銀行)理事会・・・状況により利下げの可能性も
10/30 (日)金融政策決定会合(31日まで)・・・上記参照

市場見通し

国内債券

国内においては、日銀による追加利上げが徐々に意識される展開を想定する一方で、米国が利下げサイクルに入ったことが低下要因となり、横ばいで推移すると予想する。

国内株式

国内外の政治・経済情勢に対する不透明感や7-9月期決算への警戒から、一進一退の展開を予想する。

外国債券

<米国>米国の雇用鈍化を受けてFRB(連邦準備理事会)が利下げを継続すると見込むことから、金利は小幅低下を予想する。

<欧州> 欧州景気に減速傾向が見られることや、ECBの追加利下げ観測などから、金利は小幅低下を予想する。

外国株式

<米国>11月上旬に大統領選挙を控え、様子見ムードが広がる可能性はあるものの、企業業績発表は増益が予想されていることに加え、FRBの追加利下げによる景気の下支えが期待されて、底堅い展開を予想する。

<欧州>インフレの鈍化やECBの追加利下げにより、景気回復が見込まれ、企業業績に関しても改善が期待されることから、底堅い展開を予想する。

為替市場

FRBの継続的な利下げ観測や、日銀の追加利上げ観測などから、ドルは対円で下落すると予想する。FRB、ECBともに利下げが想定されるものの、FRBの利下げ観測が高まりやすいことなどにより、ユーロは対ドルで上昇すると予想する。

政策金利
出所:Bloomberg

国内債券

9月の国内債券市場

指標銘柄/新発10年国債

9月の国内長期金利は、米国における大幅利下げ観測や、植田日銀総裁が追加利上げについて慎重な姿勢を示したことなどから低下し、月末は0.850%で終了した。

国内長期金利は、月初、米国の雇用統計を波乱なく通過したことから、大きく上昇する場面もあったものの、FRB(連邦準備理事会)による大幅利下げ観測が燻るなか、米国金利が低下基調で推移したことや、19~20日開催の日銀金融政策決定会合後の会見において、植田日銀総裁が追加利上げの判断について、時間的余裕があると慎重な姿勢を示したことなどから低下した。その後は、自民党総裁選挙を巡る思惑から、大きく上下に振れる展開となり、月末は0.850%で終了した。

イールドカーブについては、米国金利の低下などから、相対的に長期ゾーンの金利低下幅が大きくなった。信用スプレッドは、小幅拡大した。

10月の国内債券市場

10月の国内長期金利は、国内においては、日銀による追加利上げが徐々に意識される展開を想定する一方で、米国が利下げサイクルに入ったことが低下要因となり、横ばいで推移すると予想する。10月の債券市場のポイントは、①日銀の動向、②米国金利の動向、③国内債券市場の需給動向と考える。

①<日銀の動向>植田日銀総裁は、経済・物価見通しが実現していけば利上げを継続していく方針を繰り返す一方で、米国経済を巡る不透明感や物価上振れリスクの減少などについても言及し、追加利上げに慎重な姿勢を示したことなどから、市場における追加利上げ観測は後退したままである。但し、今後、米国経済の動向や物価動向などを受けて、徐々に追加利上げが意識される展開になるであろう。

②<米国金利の動向>米国では、9月に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)において、0.5%の利下げが実施された後も、大幅利下げ継続観測が燻っている。今後発表される雇用統計などの経済指標の結果によっては、金融政策の見通しを巡る思惑から、米国長期金利の変動幅が大きくなり、国内金利に波及することが考えられる。

③<国内債券市場の需給動向>10月の国債入札スケジュールとしては、10年債(3日)、30年債(8日)、20年債(24日)などが予定されている。まずは、今月最初の超長期債の入札として8日に実施される30年債入札において、生命保険会社など機関投資家による買い需要が確認できるかが注目であり、結果によっては金利が大きく変動する可能性も考えられ、注意が必要である。

イールドカーブは、フラット化すると予想する。信用スプレッドは、横ばいで推移すると予想する。

国内株式

9月の国内株式市場

日経平均株価225種 東証株価指数(TOPIX)

9月の国内株式市場は、上旬にかけて米国で経済の減速を示す指標が相次ぎ、米長期金利低下や日銀の追加利上げ観測による円高傾向から下落したものの、その後は米国景気のソフトランディング期待に加え、中国当局が大規模な景気支援策を発表したことから値を戻し、日経平均株価で1.88%の下落となった。

上旬は、米国で労働市場の悪化を示す指標が相次いだことから、FOMC(連邦公開市場委員会)での大幅利下げに対する警戒が広がり、円高ドル安の進行につれて下落した。中旬も利上げ継続を支持する日銀審議委員の発言などにより上値の重い展開が続いたが、堅調な米小売売上高や、パウエルFRB(連邦準備理事会)議長が景気に対し楽観的な見通しを示したことをきっかけに上昇に転じた。下旬は、米半導体企業の市場予想を上回る売上見通しや中国当局の大規模な景気支援策の発表を受け回復基調が続いたものの、最終日は自民党総裁選挙の結果を受け大幅に反落した。業種別には、繊維、倉庫、空運などが上昇し、医薬品、鉱業、証券などが下落した。

10月の国内株式市場

欧米中央銀行に対する利下げ期待は株価への好材料となるものの、米国経済の減速傾向から輸出関連企業の売上は伸び悩むことが想定される。国内外の政治・経済情勢に対する不透明感や7-9月期決算への警戒から一進一退の展開となることを予想する。

米国では労働市場の悪化傾向が続いており、利下げへの期待はあるものの、足元の消費は勢いに欠けることとなりそうだ。11月の米大統領選挙に加え、国内でも新政権の政策に対する不透明感が株価の上値を抑える要因となりそうだが、中国の新たな景気支援策が一定の支えとなるだろう。

上旬は小売企業の上期決算発表が集中し、8月の金融市場の急変が高額品消費やインバウンド消費に与えた影響はやや懸念されるものの、国内では4‐6月期法人企業統計調査が堅調な結果となり、実質賃金の改善傾向も続いていることから、堅調な推移となることを想定する。また、下旬から本格化する主力企業の決算でも内需関連銘柄が注目される。コロナ禍後の消費回復が一巡し、全体として業績のモメンタムは低下しているものの、国内の設備投資は伸びており、資金需要も旺盛なことから、来期にかけても業績拡大が期待できるだろう。一方、外需関連企業については一部業種で需要の弱さが見られ、下期以降は前年同期比で円安メリットも見込めなくなることから、業績は各社の事業分野や商品競争力により格差が生じることとなりそうだ。米金利の低下により株価のバリュエーションは高まる余地があり、需要を積極的に捉え、来期にかけても利益成長が見込まれる銘柄への評価が高まる動きとなることを予想する。

外国債券

9月の米国債券市場

米10年国債

9月の米国の長期金利は、労働市場の弱さなどを受けてFRB(連邦準備理事会)が大幅な利下げを実施するとの期待などから、低下した。

前半、弱い経済指標などを受けて、FRBの大幅利下げへの期待が高まったことで、低下基調となった。中旬に発表されたCPI(消費者物価指数)は、サービスや家賃などが上振れしたものの、全体としてインフレの鎮静化が確認されたことから、更に利下げへの期待が高まったことで、一時、3.5%台後半まで低下した。17~18日開催のFOMC(連邦公開市場委員会)で、0.5%の利下げが実施されたが、その後GDP改定値が上方修正されるなど、底堅い経済指標などを受けて上昇基調となり、月末は3.7%台後半となった。

イールドカーブは、利下げ期待の高まりなどから短期ゾーンを中心に低下したことで、スティープ化した。

9月の欧州債券市場

ドイツ10年国債

9月の欧州(ドイツ)の長期金利は、ドイツの景気後退懸念が高まったことや、CPIの低下などを受けて、ECB(欧州中央銀行)による利下げ期待が高まり、低下した。

前半、米国の経済指標が悪化し、米国の長期金利が低下すると、欧州の長期金利にも低下圧力がかかり、一時2.0%台後半まで低下した。その後は、米国長期金利の上昇につれて欧州の長期金利も値を戻す場面もあったが、ドイツの経済指標の悪化などを受けてECBによる利下げ期待が高まり、低下基調となった。月末は2.1%台前半となった。

ドイツ国債のイールドカーブは、スティープ化した。周辺国国債とドイツ国債の利回り差は、財政悪化懸念が高まったフランスが拡大した一方、イタリアやスペインは縮小した。

10月の米国債券市場

10月の米国の長期金利は、米国の雇用鈍化を受けてFRBが利下げを継続すると見込むことから、小幅低下を予想する。

10月の欧州債券市場

10月の欧州(ドイツ)の長期金利は、欧州景気に減速傾向が見られることや、ECBの追加利下げ観測などから、小幅低下を予想する。ECBが量的引き締めを継続していることや、一部の国の財政悪化などが懸念されるものの、ECBによる利下げ継続が予想されることから、周辺国の対ドイツ国債スプレッドは横ばいで推移すると予想する。

外国株式

9月の米国株式市場

米国S&P500指数 ダウ工業株30種平均

9月の米国株式市場は、S&P500指数で2.02%の上昇となった。雇用統計で雇用者数の伸びやISM製造業景況指数が予想を下回り、景気減速懸念が高まり軟調に推移した。その後は、半導体大手各社により、AI需要に対し前向きな見通しが示されたことやFRB(連邦準備理事会)による大幅利下げが好感され上昇し、史上最高値を更新した。セクターでは、一般消費財・サービス、公益、コミュニケーション・サービスなどが上昇する一方、エネルギー、ヘルスケア、金融が下落した。

9月の欧州株式市場

ドイツDAX指数 イギリスFT-SE(100種)指数

9月の欧州株式市場は下落した。米国経済の減速懸念が高まったほか、ドイツの鉱工業生産が大きく落ち込むなど、域内の製造業の先行きが不安視された。その後は、ECB(欧州中央銀行)とFRBの利下げに加え、中国政府による景気支援策の発表が好感されて反発し、下落幅を縮小した。国別では、スペイン、ベルギー、ドイツなどが上昇する一方、デンマーク、オランダ、英国などが下落した。セクターでは、素材、不動産、公益などが上昇する一方、エネルギー、ヘルスケア、情報技術などが下落した。

9月の香港株式市場

香港ハンセン指数

9月の香港株式市場は大幅に上昇した。月初は、米国経済の減速懸念が高まり下落した。その後も、市場予想を下回る小売売上高などを背景に中国の景気低迷が改めて意識されたものの、下旬にかけては、FRBによる大幅利下げに加え、中国政府による景気支援策の発表が好感されて急騰した。

10月の米国株式市場

10月の米国株式市場は、横ばいを予想する。11月上旬に大統領選挙を控え、様子見ムードが広がる可能性はあるものの、中旬から本格化する企業業績発表は増益が予想されていることに加え、FRBの追加利下げによる景気の下支えが期待されて、底堅い展開を予想する。

10月の欧州株式市場

10月の欧州株式市場は、横ばいを予想する。欧州域内経済は、製造業の低迷が懸念されるものの、底堅い雇用や所得環境が継続し、サービス業を中心に持ち直しの動きが続いている。インフレの鈍化やECBの追加利下げにより、景気回復が見込まれ、企業業績に関しても改善が期待されることから、底堅い展開を予想する。

10月の香港株式市場

10月の香港株式市場は、横ばいを予想する。中国では、不動産市場の低迷が長期化するなか、雇用環境の改善が見られず、個人消費が弱含むなど、景気減速が継続しているものの、香港市場に関しては、年後半にかけて、中国政府による景気支援策への期待や米国の追加利下げが支えとなろう。

為替動向

9月のドル/円相場

為替(ドル/円)

9月のドル/円相場は、FRB(連邦準備理事会)が利下げを開始したことや、自民党総裁選挙で石破氏が勝利し、金融・経済政策への不透明感が高まったことなどから、ドルは下落した。

前半、米国の弱い経済指標などを受けて、FRBの利下げ期待が高まったことなどから下落基調となった。メディア報道などを受けてFRBの大幅利下げへの期待が高まると、一時、139円台後半まで下落する場面もあった。FRBが0.5%の利下げを実施した後は、米国金利の上昇などを受けて、上昇に転じた。27日に行われた自民党総裁選挙で、アベノミクスを継承する候補者への期待などから、一時146円台まで上昇する場面もあったが、石破氏が決選投票で勝利し、金融・経済政策への不透明感が高まったことから急落し、月末は143円程度となった。

9月のユーロ/ドル相場

為替(ドル/ユーロ)

9月のユーロ/ドル相場は、FRBが利下げを開始したことなどから上昇し、月末は1.11ドル台後半となった。

9月のユーロ/円相場

為替(ユーロ/円)

9月のユーロ/円相場は、ユーロ安円高となった。ドルに対して円・ユーロは上昇したものの、円の上昇率が大きくなったためユーロ安円高となり、月末は159円台後半となった。

10月のドル/円相場

10月のドル/円相場は、FRBの継続的な利下げ観測や、日銀の追加利上げ観測などから、ドルは下落すると予想する。

10月のユーロ/ドル相場

10月のユーロ/ドル相場は、FRB、ECB(欧州中央銀行)ともに利下げが想定されるものの、FRBの利下げ観測が高まりやすいことなどにより、ユーロは上昇すると予想する。

10月のユーロ/円相場

10月のユーロ/円相場は、下落を予想する。ドルは円・ユーロに対して下落するが、円に対する下落幅の方が大きくなるため、ユーロ/円は下落を予想する。

虫眼鏡

インターネットとゲーム

ある大型家電量販店に行った時のことです。
1階は玩具売り場でたくさんのゲームが並んでいます。小学校3年生くらいの子供が、大きな画面の前でコントローラーを両手で持ち器用に操作しながら楽しんでいます。

画面の中では、主人公が敵と戦っています。持っているアイテムを瞬時に選び出し敵を攻撃するコントローラー(手)の動きに驚きました。ここまでの技を磨くにはどのくらい時間をかけるのだろう?今の子供たちがどのくらいゲームやインターネットを利用しているか、少し調べてみることにしました。

令和5年度の政府統計にある「青少年のインターネット利用環境実態調査」によりますと、青少年(満10歳~満17歳までを対象)インターネット利用率は、98.7%と回答されています。

インターネットを利用する機器順では、スマートフォン、学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等、ゲーム機器と続きます。インターネット利用率を年齢層別にみると、小学生<中学生<高校生と高学年になるにつれて多くなります。

また、スマートフォン・ゲーム機器が子供専用、親と共用、兄弟姉妹と共用しているか等の調査結果は、スマートフォンでは、子供専用が最も多く91.9%と回答され、また、ゲーム機では、子供専用の次に親との共用は15.5%と回答されています。青少年の親世代が子供の頃もゲームが盛んな時代であることも考えられることから、子供とのコミュニケーションツールとして活用されているのではないでしょうか?

・スマートフォン

スマートフォン利用率

・ゲーム機器

ゲーム機器

低年齢層(0歳から満9歳)までの調査結果も報告されていますが、インターネット利用率は74.9%、スマートフォンを親と共用の率は73.8%、ゲーム機を親と共用の率は41.9%と回答されています。

年齢別の調査では、10歳でスマートフォンの子供専用と共用の割合が逆転し、子供専用の割合が65%を超える結果も報告されています。

青少年のインターネットを利用内容の内訳は、最も多く回答された順は下記になります。

1位 動画を見る
2位 ゲームをする
3位 検索する
4位 音楽を聴く
5位 勉強をする

5位以下は投稿やメッセージ交換をする、ニ ュースをみる、地図を使う、撮影や制作、記録をする、マンガを読む、買い物をする、読書をする、その他、の順で回答されています。インターネットの利用時間(平日1日当たり)の平均時間は、高校生 約6時間14分、中学生 約4時間42分、小学生(10歳以上) 約3時間46分となり、インターネットの利用目的ごとの平均利用時間は、「趣味・娯楽」 約2時間57分が最も多く、「勉強・学習・知育」が約62.0分、「保護者・友人等のコミュニケーション」 約55.1分の順で算出されています。

インターネット利用に関する保護者の取組として、子供がスマートフォンを利用する青少年の保護者の83.4%はいずれかの方法で子供のネット利用を管理していると回答しています。

1位 フィルタリングを使っている
2位 対象年齢にあったサービスやアプリを使わせている
3位 利用してもよい時間や場所を決めて使わせている
4位 課金管理等その他の目的で管理を行っている
5位 何を (内容)どのくらい (時間)使っているか把握している

5位以下は機器の設定で時間管理している(OS事業者提供サービスを含む)、OS事業者提供サービスを利用してコンテンツ制限をしている、目の前 (画面が見える距離)で使わせている、無回答、の順で回答されているようです。スマートフォン、ゲーム機器もコミュニケーションツールとしてとても便利である一方で、管理の幅や内容に悩む保護者の方も多いことと思います。生まれた時から携帯電話・スマートフォンでの電話やメールがあった世代は、電話をかければ本人が出るという環境で育ってきたため、面識のない相手に電話をかける事をかなり苦手としている人が多いようです。ある会社の人事部の方とお話しする機会があったのですが、「最近の新入社員には、電話をかける事から教えています」とおっしゃっていました。便利な反面、弊害もありますね。

【参考】
こども家庭庁 令和5年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)