レポート

2021年6月-Vol.301

まとめ

今月のポイント

6月10日に米国のCPIが発表されます。先月発表された4月の数字は前年比で+4.2%、食品・エネルギーを除くベースで+3.0%と高い伸びとなり、長期金利が急上昇しました。前年の水準が新型コロナウイルス感染拡大の影響で低く抑えられたことも影響しており、FRB(連邦準備理事会)高官も一過性のものとコメントしています。但し、需要の高まりやサプライチェーンの障害等により実際に物価上昇圧力が高まっている可能性もあり、今後の動向が注目されます。

市場動向
国内債券 緊急事態宣言の延長を受けた景況感の悪化などが金利低下要因となるものの、一段の金利低下による高値警戒感や、日銀の国債買い入れオペ減額観測などが金利上昇要因となり、月間では小幅上昇を予想する。
国内株式 国内ワクチン接種の進展の加速がプラス材料となる可能性はあるものの、FRBによるテーパリング(量的緩和の縮小)への懸念などから上値は限定的で一進一退の展開を予想する。
外国債券 <米国>FRBによるゼロ金利政策の長期化方針などが金利低下要因となるものの、根強いインフレ懸念やワクチン接種の進展による経済活動の正常化期待、テーパリングに対する警戒感などが金利上昇要因となり、金利は小幅上昇すると予想する。
<欧州>ECBの金融緩和を重視する姿勢などが金利低下要因となるものの、ワクチン接種ペースの加速による景況感の改善や、ECBによる国債購入ペースが鈍化するとの思惑などが金利上昇要因となり、ドイツ金利は小幅上昇すると予想する。
外国株式 <米国>予想を上回る企業業績は好材料ながら、長期金利の一段の上昇への警戒感から一進一退の横這いを予想する。
<欧州>米国同様にインフレ懸念の台頭で上値は重くなり、一進一退で横這いを予想する。
為替市場 FRBによるゼロ金利政策の長期化方針などから、ドルに下押し圧力が掛かる場面があるものの、金融政策の方向性の違いによる日米金利差の拡大観測などがサポート要因となり、ドルは対円で小幅上昇すると予想する。ECBが金融緩和を重視する姿勢を維持していることはユーロの重石となるものの、ワクチン接種ペースの加速による景況感の改善などから、ユーロは対ドルで小幅上昇すると予想する。

ポイント

6月10日に米国のCPIが発表されます。先月発表された4月の数字は前年比で+4.2%、食品・エネルギーを除くベースで+3.0%と高い伸びとなり、長期金利が急上昇しました。前年の水準が新型コロナウイルス感染拡大の影響で低く抑えられたことも影響しており、FRB(連邦準備理事会)高官も一過性のものとコメントしています。但し、需要の高まりやサプライチェーンの障害等により実際に物価上昇圧力が高まっている可能性もあり、今後の動向が注目されます。

今月の主なポイント
6/10 (米)CPI(5月)・・・上記参照
(ユーロ)ECB(欧州中央銀行)理事会・・・現状維持が見込まれる
6/15 (米)FOMC(連邦公開市場委員会、~16日)・・・現状維持が見込まれる
6/17 (日)日銀金融政策決定会合(~18日)・・・企業の資金繰り支援策を延長か
米国消費者物価指数

出所:米国労働統計局資料をもとに富国生命投資顧問作成

国内債券

指標銘柄/新発10年国債
5月の国内債券市場

5月の債券市場は小幅上昇(金利は低下)した。
10年国債利回りは、前半は緊急事態宣言による景況感の悪化やリスク資産の乱高下などを受けて、低下する場面もあったものの、後半は方向感に乏しく、狭いレンジでの推移が続き、月末は0.075%で終了した。

イールドカーブは、残存期間25年超の超長期ゾーンの金利が上昇し、カーブは小幅スティープ化した。信用スプレッドは、小幅縮小した。

6月の国内債券市場

6月の債券市場は、小幅下落(金利は上昇)すると予想する。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の延長を受けた景況感の悪化や弱い物価の上昇圧力などが金利低下要因となるものの、一段の金利低下による高値警戒感や、日銀の国債買い入れオペ減額観測などが金利上昇要因となり、月間では小幅上昇を予想する。

6月の債券市場のポイントは、①新型コロナウイルスの感染拡大の動向、②国内債券市場の需給動向、③米国金利の動向と考える。

①<新型コロナウイルスの感染拡大の動向>東京など9都道府県への緊急事態宣言が6月20日まで延長されることが決定したが、ワクチンの大規模接種が開始されており、今後接種ペースが加速することに伴い、国内でも徐々に景気回復期待が高まると想定されることから、一方的に金利低下が進む展開にはなりにくいであろう。

②<国内債券市場の需給動向>先月実施された20年国債入札や、今年度から発行額が増額となった40年国債入札では、引き続き投資家の需要が確認されたものの、金利の低下余地が限られる中、超長期ゾーンの金利は小幅上昇した。6月3日には10年国債入札が予定されているが、0.10パーセントを下回る水準での推移が続いており、投資妙味は後退している。入札に向けては、金利に上昇圧力が掛かりやすくなる展開が想定される。

③<米国金利の動向>米国では、ワクチン接種の進展による景気回復期待が高まる中、雇用統計などの経済指標やインフレ指標に注目が集まる。FRB(連邦準備理事会)の要人からは早期のテーパリング(量的緩和の縮小)を否定する発言が相次いでいるが、今後の景気回復やインフレ上昇次第では、再びテーパリングへの思惑が高まり、米国金利には上昇圧力が掛かる場面がありそうだ。日銀は金融緩和姿勢を維持しているものの、国内金利にも上昇圧力が掛かることには、注意が必要である。

イールドカーブは、景況感の悪化やリスク資産の乱高下から、フラット化する可能性があるものの、米国イールドカーブのスティープ化や、超長期ゾーンにおける需給悪化懸念から、小幅スティープ化を予想する。

信用スプレッドは、日銀による社債買入れオペなどの政策サポートや企業業績の回復などから緩やかな縮小傾向が続くと予想する。

国内株式

日経平均株価225種東証株価指数(TOPIX)
5月の国内株式市場

5月の株式市場は、米国のインフレ懸念の高まりなどから下落する局面はあったが、ワクチン接種の本格化による経済活動の正常化への期待などから日経平均株価で0.16%の小幅な上昇となった。

連休明けは、堅調な経済指標の発表などを背景とした米国株式市場の高値更新を受けて上昇して始まったものの、その後は、インフレ加速が警戒され米国長期金利が上昇したことや、4月の米CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回る伸びとなったことなどから下落した。下旬に入ると緊急事態宣言が延長されるとの観測もあり上値は重かったが、大規模接種の開始などからワクチン普及が急速に進むとの期待が高まり上昇に転じ、月末にかけてはバイデン大統領が予算教書で6兆ドルの歳出を求める計画と伝わったことも好感されて上昇基調が続いた。

業種別には輸送用機器、ゴム、精密などが上昇し、情報・通信、電気・ガス、ガラス・土石などが下落した。

6月の国内株式市場

企業業績の回復基調に加え、国内ワクチン接種の進展の加速がプラス材料となる可能性はあるものの、FRB(連邦準備理事会)によるテーパリング(量的緩和の縮小)への懸念などから上値は限定的で一進一退の展開を予想する。

欧米に比べて遅れているワクチン接種が本格化している。政府は医療機関向け支援や打ち手を増やすための特例などにより、6月中旬以降に1日100万回への引き上げを表明している。緊急事態宣言の発令・延長により、サービス消費は低調が続いているが、今年度後半から来年度には経済活動の正常化により回復に転じると予想している。一方で、今年度の会社ガイダンスが外需関連を中心に増収増益の見通しにもかかわらず、決算発表後の株価の上値が重かったのは、企業業績のモメンタムを示すリビジョンインデックス(アナリストの業績予想の修正を指数化したもの)が低下したためとみている。今後、本格的な上昇に転じるにはワクチンの本格的な普及などにより業績の上振れ期待が高まってくることなどが必要と考えている。

米国景気が急回復するなかで、FRBによるテーパリングの動向が注目されている。4月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨によると、多数の参加者が「景気の急回復が続くなら資産購入ペースの調整について協議を開始することが適切」と指摘している。テーパリングはインフレを抑制し景気拡大を継続させるために実施されるが、株式市場を支えてきた大規模な資産購入政策の転換であり、リスクを伴うことも事実だろう。前回(2014年1月~10月)については、当初テーパリング実施観測(2013年5月)により株価は大幅に下落したが、その後は正式な議論の開始(2013年9月)などに伴い徐々に上昇基調に戻っている。今回はFRBが事前にメッセージを開示しており、市場の混乱は避けられるとみているものの、方向性がみえてくるまでは上値を抑える要因となると考えている。

外国債券

米10年国債ドイツ10年国債
5月の米国債券市場

5月の米国の長期金利は低下した。市場予想を大幅に下回った雇用統計を受けて、上旬に一時1.46%台まで低下した後、予想を上回るCPIを受けた早期のテーパリング(量的緩和の縮小)観測から、中旬には一時1.70%台まで急上昇した。月末にかけては、欧州の長期金利が低下に転じる中、米金利も低下基調で推移し、月末は1.5%台後半となった。

5月の欧州債券市場

5月の欧州(ドイツ)の長期金利は上昇した。ワクチン接種ペースの加速や、ECB(欧州中央銀行)による国債購入ペースが鈍化するとの思惑、インフレ懸念の高まりなどから、中旬には▲0.1%を超えて上昇する場面があった。月末にかけては、ECB高官による早期の国債購入減額に否定的な発言が相次いだことを受けて、低下に転じ、月末は▲0.1%台後半となった。周辺国国債とドイツ国債の利回り差は小幅に縮小した。

6月の米国債券市場

6月の米国の長期金利は、小幅上昇を予想する。FRB(連邦準備理事会)によるゼロ金利政策の長期化方針や、相対的に利回りの高い米国債に対する投資需要などが金利低下要因となるものの、根強いインフレ懸念やワクチン接種の進展による経済活動の正常化期待、テーパリングに対する警戒感などが金利上昇要因となり、月間では小幅上昇すると予想する。

6月の欧州債券市場

6月の欧州(ドイツ)の長期金利は、小幅上昇を予想する。ECBの金融緩和を重視する姿勢などが金利低下要因となるものの、ワクチン接種ペースの加速による景況感の改善や、ECBによる国債購入ペースが鈍化するとの思惑などが金利上昇要因となり、月間ではドイツ金利は小幅上昇すると予想する。

外国株式

米国S&P500指数ダウ工業株30種平均ドイツDAX指数イギリスFT-SE(100種)指数香港ハンセン指数
5月の米国株式市場

5月の米国株式市場は、S&P500指数で、0.55%の上昇となった。月初の非農業部門雇用者数の増加が市場予想を大幅に下回ったことで、金融緩和の長期化観測が強まり史上最高値を更新した。その後、消費者物価指数が予想を大きく上回りインフレ加速が懸念されて下落したものの、欧州の金利低下に連れた長期利回りの低下や情報技術関連銘柄の好決算で反発した。セクターでは、素材、エネルギー、金融などが買われた一方、一般消費財・サービス、公益、情報技術などが売られた。

5月の欧州株式市場

5月の欧州株式市場は、上昇した。上旬は予想を上回る経済指標が好感された。その後、米国のインフレ懸念から下落する局面もあったが、米国の長期債利回りが低下する中、欧州経済の本格的な回復期待も強く米国市場の上昇に追随して上昇した。国別では、オーストリア、イタリア、スペインなどを中心に全ての国が買われた。セクターでは、一般消費財・サービス、不動産、生活必需品などを中心に情報技術を除く全てのセクターが買われた。

5月の香港株式市場

5月の香港株式市場は、上昇した。前半は、中国当局の大手一般消費財・サービスやコミュニケーションサービス関連企業への規制強化に対する警戒感や、米国の長期債利回り上昇などから下落した。

その後、欧米市場の上昇や、中国金融当局などが急騰する商品価格抑制策を打ち出したことで金融引き締め観測が後退し、月末にかけて上昇した。

6月の米国株式市場

6月の米国株式市場は、横這いで推移するだろう。経済正常化とサプライチェーンの障害などで商品市況が高騰しており、インフレ懸念の台頭で金融緩和の転換点が意識され始めている。予想を上回る企業業績は好材料ながら、長期債利回りの一段の上昇への警戒感から一進一退の動きを予想する。主要な経済指標、米中対立の動向、法人税引き上げ議論の行く末などが変動材料となろう。

6月の欧州株式市場

6月の欧州株式市場は、米国同様にインフレ懸念の台頭で上値が重くなる一方、米国との相対比較での出遅れ感や緩和的な金融政策が継続することから、米国同様、一進一退で横這いを予想する。ユーロ高、変異株の新型コロナ感染状況などは警戒材料となろう。

6月の香港株式市場

6月の香港株式市場は、米中間の対立の行方、中国の規制当局によるネット大手企業への規制強化などが引き続き懸念される中、グローバルな景気回復トレンドの継続は好材料ながら、インフレ懸念に発した長期債利回り動向を巡り欧米同様に一進一退となろう。

為替動向

為替(ドル/円)為替(ドル/ユーロ)為替(ユーロ/円)
5月のドル/円相場

5月のドル/円相場は、ドル高円安となった。米雇用統計の下振れを受けて108円台前半まで下落した後、米金利の急上昇を受けた日米金利差の拡大から、一時109円台後半まで上昇した。その後は、下落傾向となったものの、月末にかけては、日本で緊急事態宣言の再延長が決まる中、円が売られる展開となり、月末は109円台前半となった。

5月のユーロ/ドル相場

5月のユーロ/ドル相場は、ユーロ高ドル安となった。欧州の景況感改善や、欧米金利差の縮小などからユーロは堅調地合いが継続し、下旬には1.22ドル台後半まで上昇した。月末にかけては、欧州金利が低下に転じる中、欧米金利差の拡大からユーロは弱含み、月末は1.22ドル台前半となった。

5月のユーロ/円相場

5月のユーロ/円相場は、ユーロ高円安となった。ドルに対してユーロは上昇、円は下落したため、ユーロ高円安となり、月末は133円台後半となった。

6月のドル/円相場

6月のドル/円相場は、小幅上昇を予想する。FRB(連邦準備理事会)によるゼロ金利政策の長期化方針や、米国長期金利の上昇一服などから、ドルに下押し圧力が掛かる場面があるものの、ワクチン接種の進展による経済活動の正常化期待や、金融政策の方向性の違いによる日米金利差の拡大観測がサポート要因となり、月間ではドルは小幅上昇すると予想する。

6月のユーロ/ドル相場

6月のユーロ/ドル相場は、小幅上昇を予想する。ECB(欧州中央銀行)が金融緩和を重視する姿勢を維持していることはユーロの重石となるものの、ワクチン接種ペースの加速による景況感の改善などから、月間ではユーロは小幅上昇すると予想する。

6月のユーロ/円相場

6月のユーロ/円相場は、小幅上昇を予想する。ドルは円に対して上昇するが、ユーロに対して下落するため、ユーロ/円は上昇を予想する。

虫眼鏡

『遺品整理の周辺』

恩師の遺品整理にまつわる話です。かれこれ逝去されて丸3年が経ちましたが、恩師はイスラーム哲学、思想、文化を専門とし、かの泰山北斗Iの直弟子として学究生活を始めた方でした。Iの弟子というだけでこれはもう大変なことで、先ず語学の達人であることは間違いなく(I は20数ヵ国語を操ったといわれる天才)、これは数多の古典原典の翻訳で証明済みです。筆者自身、いまだかつてこのように多言語を習得された日本人に出会ったことはありません。もちろん語学だけではなく古今東西の文化、文明を縦横無尽に語ることのできる、まさに碩学という言葉が当てはまる、そんな方でした。

偶然にも筆者は、恩師との知遇を得、怖いもの知らずも手伝って師の専門分野の基礎となる多言語習得の大海原に憧れてその門を叩き、同期3名とともに門弟若干名の末席に名を連ねることとなりました。とはいえ、兎に角厳しい師匠であり、論文指導ともなれば、「頭の悪さが滲み出ている」と一言。指導の刃がグサッと胸に刺さり、立ち上がれなくなるほどのダメージを味わったのは一度や二度ではありません。師の専門であるアラビア語などなまじ齧っていようものなら、ひとたまりもなく捻り潰されるということに相成り、絶望の淵に追いやられた弟子は一人、二人とやがて師のもとを去って行ったとか。真の学問、学究の道は厳しいのだと、つくづく考えさせられたものでした。

こうしたことで、恩師には学究の弟子がやたらと少なかったのも事実でした。いや、いないに等しかったと言えるかもしれません。こと学問となれば一徹という師ではありましたが、一方で美食家でもあった恩師は、ご夫人(この方も学者)との二人だけの晩餐は寂しかったのか、必然的に鈍感極まりないわれら数名の酒徒、食徒にお声が掛かり、Nunc est bibendumとばかりに、飲んで、食べて、わぁーわぁー騒いで無礼講の宴、夜な夜な恩師宅でただ酒ただ飯を頂戴するという出来の悪い末席の弟子だけが残るというありさまでした。とんでもない奴らだとこぼしながらも、「飲め」とばかりになみなみと酒を注いでもらい(やがて手酌に移行)、あーすいません、頂戴します!と記憶が途切れるまで繰り返すお決まりのパターンは、筆者が学究の道から大きく逸脱してからも尚、他界される直前まで続いたのでした。

さて、サラリーマン生活30年以上の筆者から見れば、大変羨ましい人生を送られた恩師も寄る年波には抗えず、幾多の友人、知人に惜しまれつつこの世を去り、後に残されたのは、専門書籍の山また山、古今東西のアンティーク・珍品、現代アートの数々、そして元門弟数名。外観は昭和そのものの普通の二階建ての家屋ながら、中に入れば、宛ら専門図書館、民俗資料館、古代オリエント館という様相は変わらないものの、居間に飾られた恩師のお気に入りだったシリア・アレッポ市街や客で賑わうスーク(バザール)の写真パネルは色褪せ、主のいない空間の寂しさだけを引き立たたせているのでした。照り付ける太陽を遮断するように張り巡らされた迷路のような薄暗いそのスーク空間は、夏の盛りでもどことなく涼しい風すら感じさせる不思議な場所として、いまだ筆者の脳裏にも焼き付けられていますが、今となっては激しく破壊され、再び訪れることすらままならず、夢のあと。

さて、約1年半掛かりでようやく整理のメドがついた時には、達成感とも寂寥感とも、なんとも言えぬ感情がじわじわとこみ上げてきました。春先の過酷な論文合宿の合間、一向に筆の進まぬ門弟同士、気分転換に散策した恩師のご自宅近くの美しかった砂浜もすっかり浸食が進み、海水浴場の看板を降ろして随分年月が経つとか。残されたのは遠い記憶と心象風景のみ。筆者自身初めてお会いした時の恩師の年齢を超えた今、感慨は深まるばかりです。心の声にしたがい、いざ生前整理の掛け声とともに、ゴールデンウィークは片付けに全集中し、勢い余って長年大事にしてきた本まで処分してしまったことを後悔している今日この頃、何処よりcarpe diemと恩師の声が聞こえてきそうな気がします。