コラム

Vol.39

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第19回目の今回は、「サービス(Services)」セクターから「外食産業(Restaurants)」とのエンゲージメントテーマを取り上げます。

外食産業の企業は、顧客の注文により、直ちに店内・店外で消費される食事、軽食、飲料を調理します。このセクターは、特に業界のフランチャイズモデルや地元の零細業者の存在も相まって、参入障壁が比較的低い成熟した業界と言われています。このことは成長スピードを加速させる一方、企業のリスクも増加させます。というのも、消費者がフランチャイズ店と直営店を区別できないからです。業界内の競争が激しく、利幅が低いため、エネルギー、水、原材料の効率を管理することが重要です。また、多くの代替品を提供する消費者向けの業界であるため、食品の安全衛生や健康的な食事メニュー、労働慣行(最低賃金など)、持続可能な調達といった報道リスクを抱えています。

外食産業のエンゲージメントテーマは、「環境」「社会資本」「人的資本」「リーダーシップおよびガバナンス」「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」については、「エネルギーおよび水の管理」と「食品および包装材の廃棄物管理」をテーマとして掲げています。「エネルギーおよび水の管理」については、「企業にとって主なエネルギー資源は何なのか?そして、不安定な化石燃料価格や上昇する電気料金によって企業はどのような影響を受けるのか?」という点と「特に水ストレスの高い地域にある事業所では、水への継続的なアクセスを確保するため、どのような取組みを行っているのか?」という点に着目しています。「食品および包装材の廃棄物管理」においては、「食品および包装材の廃棄物を最小限に抑えるため、費用対効果の高い在庫管理をどのように確保しているのか?」という点を確認しています。

「社会資本」に関しては、「食品の安全衛生」と「栄養成分」をテーマとして取り上げています。「食品の安全衛生」に関しては、「直営店やフランチャイズ店舗において食中毒が発生するリスクを最小限に抑えるため、どのような手順を整備しているか?」、そして「サプライチェーンや調理過程において、食品の品質と安全性をどのように確保しているのか?」という2点に注目しています。「栄養成分」では、「より健康的な食品に対する消費者の嗜好の高まりに対し、どのように対処するつもりなのか?」そして「子供をターゲットとしている企業は、どのような健康的なサービスを提供しているのか?」という点をエンゲージメントで取り上げています。

「人的資本」では、「公正な労働慣行」に焦点を当て、「最低賃金の大幅な上昇が国または自治体レベルで発生した場合、企業の総人件費に対しどのような影響を及ぼすのか?」という点を取り上げるほか、「従業員の離職率やその関連費用を減少させるため、どのような戦略をとっているのか?」という点を確認しています。さらに、「直営店、フランチャイズ店を問わず、管理者が労働法を順守していることをどのように担保しているのか?」、そして「経済特区内で操業することは、企業戦略において重要か?もし重要ならば、経済特区の提供が変更されることに対する影響度合いはどの程度あるのか?」という点に注目しています。

「リーダーシップおよびガバナンス」については、「サプライチェーンマネジメントおよび食品調達」をテーマとして掲げ、「企業は、ESG課題(気候変動や動物愛護など)によって、短中期的に影響を受ける可能性のある主要な部材供給あるのか?そして、こうした状況にどのように対処しているのか?」という点に注目しています。

「その他考慮事項」に関しては、「直営店およびフランチャイズ店舗の数」および「直営店およびフランチャイズ店舗の所在地別従業員数」の2つが挙げられています。