コラム

Vol.31

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第10回目の今回は、「消費財Ⅱ(Consumption II)」から「ドラッグストア&コンビニエンスストア(Drug Retailers & Convenience Stores)」関連企業とのエンゲージメントテーマについて取り上げます。

ドラッグストア&コンビニエンスストア業界は、ドラッグストア、コンビニエンスストアおよび小売店に供給している物流センターを運営する企業で構成されています。大企業は、卸売業者や流通業者を通じて医薬品やその他の商品を調達しています。この業界に属する大半の企業の収益は、処方箋および一般用医薬品から得られるものとなります。また、販売される他の商品には、家庭用品、パーソナルケア製品、および一部の食料雑貨が含まれます。さらに、ドラッグストアの部門は、様々な小売店舗で相談所を提供することで、健康関連のサービスを拡大しています。このことが、この業界における持続可能性に関する展望の流動化に拍車をかけています。重要な問題と位置付けられているデータプライバシーに対する規制当局の関心や消費者の懸念が、企業の業績を左右しています。ドラッグストア業界は、規制物質の乱用や患者の総合的な健康状態、回避可能な医療費など、大きな社会問題に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、サービスの提供または製品の調達に関する安全性への懸念は、企業のブランド価値に影響する可能性があります。

ドラッグストア&コンビニエンスストア業界のエンゲージメントテーマは、「環境」「社会的資本」「リーダーシップ&ガバナンス」「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」では、「小売業におけるエネルギー管理」をエンゲージメントテーマとして取り上げており、「小売店舗におけるエネルギー使用量を最小化するための企業戦略」について着目しています。

「社会的資本」については、「データセキュリティおよびデータプライバシー」「規制物質の管理」「患者の健康状態」の3つをテーマとしています。「データセキュリティおよびプライバシー」では、「データセキュリティ障害を防止するために企業はどのような取組みを行っているのか?そして、顧客の重要情報の漏えいに対処するために、どれくらい入念に準備をしているか?」ということを取り上げている他、「HIPAA*違反を防止するために、企業はどのような追加のセキュリティ対策を講じているのか?」という点でのエンゲージメントが求められています。「規制物質の管理」については、「規制物質の適切な調剤をどのように確保しているのか?」という点が重要視されています。「患者の健康状態」では、「薬剤を処方通りに服薬する意識を患者の間に高めるための企業戦略とは何か?」「処方箋の調剤ミスを防ぐため、どのような管理対策を講じているのか?」そして「企業は、さまざまな地域社会の多様なニーズにどのように対応しているのか?」という3点について確認を促しています。

「「リーダーシップ&ガバナンス」では、「医薬品サプライチェーンの健全性」を取り上げています。そして、「無認可製薬や偽造医薬品の横行を食い止めるため、企業はサプライヤーとどのようなエンゲージメントを行っているのか?」そして「ドラッグリコール、特にプライベートブランド製品からのリコール量を削減するために、どのような管理体制を導入しているのか?」という点に焦点を当てています。

最後に、「その他考慮事項」では、「ドラッグストアの店舗数や総面積」「発行された処方箋の数および管理物質の割合」「薬剤師の数」に注目しています。


*HIPAA: Health Insurance Portability and Accountability Actの略。日本語では、「医療保険の相互運用と説明責任に関する法律」と訳される。