コラム

Vol.30

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第9回目の今回は、「テクノロジー&コミュニケーションセクター」から「ソフトウェア&ITサービス(Software & IT services)」関連企業とのエンゲージメントテーマについて取り上げます。

ソフトウェア&ITサービス産業は、製品・サービスをグローバルに提供していますが、2つの主要セグメントから構成されています。ソフトウェア企業は、アプリケーションソフトウェア、インフラ向けソフトウェア、ミドルウェアの開発及び販売に携わっています。一方、ITサービス企業は、コンサルティングサービスや委託サービスなどの専門的なIT機能を提供しています。

ソフトウェア&ITサービス業界のエンゲージメントテーマは、「環境」、「社会資本」、「人的資本」、「リーダーシップ&ガバナンス」、「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」では、「ハードウェア設備の環境フットプリント」をテーマとして取り上げ、「データセンターでのエネルギー使用の最適化や電力網の障害に備える企業の戦略とはどのようなものか?」そして「企業は、データセンターにおける水資源の入手可能性について考慮しているのか?」という点に焦点を当てています。

「社会資本」については、「データプライバシー&表現の自由」と「データセキュリティ」の2つをテーマとしています。「データプライバシー&表現の自由」では、「収益獲得のために顧客の個人データを活用することと顧客のプライバシーの維持とのバランスをどのように管理しているのか?」「顧客情報に関する行政や司法機関からの要請に対して、企業はどのように対応しているのか?」そして「行政から要求される監視、遮断、コンテンツフィルタリング(情報の内容によるふるい分け)、データの検閲に企業はどれくらいさらされているのか?そして、それは企業の評判や成長にどのように影響するのか?」について着目し、エンゲージメントすることが求められています。「データセキュリティ」に関しては、「企業は、取扱っている製品のデータセキュリティリスクをどのように特定し、そして対処しているのか?」「データセキュリティ違反があった場合の顧客への通知手順とはどのようなものか?」そして「サイバー攻撃に対する保護とデータ保全のために社内ではどのようなプロセスを採用しているのか?」について着目しています。

「人的資本」においては、「グローバルで多様なスキルを持つ労働力の採用と管理」をテーマとし、「STEM(Science(科学), Technology(技術), Engineering(工学) and Mathematics(数学))専攻の優れた志願者を確保できないことによる労働力不足により、企業はどのような問題に直面するか?」「優れた技術系志願者を引き付け、採用し、定着させるために、企業はどのような戦略を採用しているのか?」そして「(特に)経営層と技術系の役職において、性別および人種・民族の多様性を確保にするために、企業はどのようなことを実施しているのか?」について焦点を当てています。

「リーダーシップ&ガバナンス」では、「技術的な混乱に起因するシステミックリスクの管理」と「知的財産保護と競争行動」の2つをテーマとし、「技術的な混乱に起因するシステミックリスクの管理」では、「ITシステムとソフトウェアの信頼性と品質を適切に検査して保証するために、企業はどのような戦略を講じているのか?」という点でのエンゲージメントが求められています。また、「知的財産保護と競争行動」では、「知的財産の保護と他社の特許への侵害の可能性をめぐる法環境を企業はどのように管理しているか」がエンゲージメントテーマとして取り上げられています。

「その他考慮事項」に関しては、「ライセンスまたは契約の数、クラウドベースの割合」「データ処理能力、外部委託の割合」「データストレージ容量、外部委託の割合」の3つが取り上げられています。