コラム

Vol.26

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第5回目の今回は、「消費財Ⅱセクター(Consumption ⅡSector)」から「アパレル、アクセサリー、フットウェア(Apparel, Accessories & Footwear)」関連企業とのエンゲージメントテーマについてです。

アパレル、アクセサリー、フットウェア業界は、デザイン、製造、卸売、小売に係わる企業で構成されています。特に小売業に関しては、男性向け・女性向け・子供向けの衣類、ハンドバック、宝飾、時計、靴といった幅広い商品を取り扱っています。

新興市場の製造業者に外部委託することにより、人件費の削減、生産規模の拡大が可能となるほか、自分たちはデザインや卸売、マーケティング、小売といった事業活動に専念することができます。

近年、サプライチェーンにおける労働環境や環境影響、有害な化学薬品の使用をはじめとしたサステナビリティ課題に注目が集まっており、この業界における新たな機会と脅威を作り出しています。さらに、気候変動問題やコットンなどこの業界で使用されている主な原材料の資源不足といった問題への関心度が高まっており、そうした関心の高まりがイノベーションの必要性を高めています。消費者・ステークホルダー・規制当局が、これらの課題に対する企業の取組み成果をますます重視するようになるにつれ、こうした課題は、企業価値に対して著しい影響を持ち続けることになるでしょう。

このようなアパレル、アクセサリー、フットウェア業界におけるエンゲージメントテーマとしては、「社会資本」「リーダーシップおよびガバナンス」そして「その他考慮事項」で構成されています。

「社会資本」では、「製品における化学薬品の管理」が取り上げられており、「規制物質に対する企業の対応策とは何か?」そして、「企業は、自社がビジネスを展開している全ての国や市場の中で一番厳しい規制を反映した規制物質リストを使用しているか否か?」といった点に焦点を当てています。その他にも、「企業は、最終製品に使用される化学薬品の管理にハザードアプローチ、もしくはリスクベースアプローチを用いているか?」、「企業は、最終製品において、まだ規制されていないが使用に関して懸念されている物質に対し、どのような対策を取っているのか?」といった点に着目しています。

「リーダーシップおよびガバナンス」では、「原材料の調達&イノベーション」、「サプライチェーンにおける労働環境」、「サプライチェーンにおける環境影響」の3つをテーマとし、「原材料の調達&イノベーション」では、「企業が最も依存している原材料にまつわるリスクは何か?」、そして「これらのリスクを低減するためにどのような革新を図っているのか?」といった点が注目されています。「サプライチェーンにおける労働環境」では、「サプライヤーの施設における労働者の公正な待遇や安全を確保するため、企業はどのような戦略をもっているのか?」、「一次サプライヤー以降のサプライヤーの労働安全状況を監査する方法はどのようなものか?また、企業は、その種の方法論がこの先どのように進化すると考えているのか?」、「サプライチェーンにおける透明性を向上するため、どのような取組みを実施し、その進捗状況はどうなっているのか?」と言った内容で対話を持つほか、「サプライチェーンの労働安全における一番のリスクとは何か?そして企業は、これらのリスクがどのように発生すると予想しているのか?かつ、こうしたリスクを回避するために、企業は何をしているのか?」「サプライチェーンにおける社会または労働問題の中で最も企業が取組みを進めている課題とは何か?また、企業が取り組む上で最も努力を要する課題は何であると判断しているのか?」をエンゲージメントの題材としています。「サプライチェーンにおける環境影響」では、「サプライヤーの施設の排出量やその他の環境に与える影響をどのようにモニタリングしているのか?」、「サプライチェーンにおける環境問題の中で最も企業が取組みを進めている課題とは何か?そして、どの課題が企業にとって最も挑戦的なものなのか?」、「サプライヤーの施設で排出されている化学薬品に関連するリスクとは何か?そして、これらのリスクを企業はどのように低減しているのか?」についてエンゲージすることを求めています。

「その他考慮事項」としては、「(1)一次サプライヤーの数」、「(2)一次より下のサプライヤーの数」の把握を求めています。