コラム

Vol.25

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第4回目の今回は、前回同様、「消費財Ⅰセクター(Consumption ⅠSector)」から「ノンアルコール飲料(Non-Alcoholic Beverages)」関連企業とのエンゲージメントテーマについてです。

ノンアルコール飲料セクターは、炭酸清涼飲料、お茶、ジュース、水、コーヒーなどの幅広い飲料を生産している企業で構成されています。一般的に、大手企業は濃縮原液やシロップを独立系の飲料製造業者や瓶詰めを請け負うパートナーに販売し、そこで、濃縮原液を砂糖もしくは他の甘味料、炭酸水と混ぜ合わせ、最終製品を製造します。

この業界は、サプライチェーンやノンアルコール飲料の製造・販売・配送における原材料の調達に関連したESG課題に直面しています。さらに、ノンアルコール飲料は、健康や栄養に関連する新たな問題に対して敏感であり、そうした問題は企業の製品構成にも影響を与えています。

このようなノンアルコール飲料業界におけるエンゲージメントテーマとしては、「環境」「社会資本」「ビジネスモデルおよびイノベーション」「リーダーシップおよびガバナンス」そして「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」に関しては、「エネルギーおよび燃費管理」と「水管理」が取り上げられています。「エネルギーおよび燃費管理」では、具体的に「製造過程におけるエネルギー使用削減のための企業戦略とは何か?」そして「企業がどのようにエネルギーミックスをマネジメントして、エネルギーの途絶やエネルギー価格の上昇の影響を少なくしているのか?」といった点に着目しています。「水管理」については、「製品販売数量1単位あたりの水使用を減らすために採用した戦略とは何か?」といった点や、「水ストレスのある地域において、供給が途絶える可能性やコストの上昇を最小限に抑えるため、企業が採用している戦略とは何か?」、そして「流出物が現地の品質基準を確実に満たすようにするために、廃水をどのように監視・管理しているか?」をエンゲージメントの題材としています。

「社会資本」では、「健康と栄養」および「製品表示とマーケティング」が取り上げられています。「健康と栄養」では、「肥満や原材料に対する懸念といった、自社製品に関連する消費者の健康や栄養の問題意識に関するトレンドの変化をどのようにマネジメントしているのか?」、「健康面や栄養面の特性を高めるための製品を市場に出すために、どのような戦略を採用しているか?」、そして「今までこれらの製品がどのようなパフォーマンスを上げてきたのか?」に焦点を当てています。「製品表示とマーケティング」については、「子供向け製品のマーケティングと、当該製品がもたらす肥満の可能性とのバランスをどのようにとっているのか?」、「GMO(Genetically Modified Organism: 遺伝子組み換え生体)表示をどのように行っているのか?」、「GMO表示製品の潜在的リスクや原材料にGMOが含まれる場合の健康への懸念をどのように把握し、管理しているのか?」、そして「販売の際に製品包装に書かれる健康に関する表示をどのように監視し、確認しているのか?」、「製品のマーケティングや表示に関する法的リスクはあるのか?」といった点についてエンゲージすることを求めています。

「ビジネスモデルおよびイノベーション」については、「梱包のライフサイクル管理」がテーマとして掲げられ、「企業はどのように梱包の最適化を図っているのか?」、そして「どの程度コスト削減が実現できているのか?」について焦点を当てています。

「リーダーシップおよびガバナンス」では、「原料におけるサプライチェーンの環境および社会的影響」をテーマとし、「サプライチェーンにおける水リスクとは何か?そして、気候変動要因によって、原材料の供給が停止してしまう可能性はあるのか?」といった点や、「企業は農作物関連の原材料の供給が途絶するリスクをどのように管理しているのか?」、「サプライチェーンにおける主な社会的および(または)環境に関する外部性とは何か?そして、収穫高や生産高に影響をもたらす外部性をどのように予見しているのか?また、こうした外部性を低減するための戦略とは何か?」について企業とエンゲージすることを求めています。

「その他考慮事項」としては、「販売した製品の数量」「生産工場の数」「車両による輸送の総走行距離」の把握を求めています。