コラム

Vol.23

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第2回目の今回は、「消費財Ⅰセクター(Consumption I Sector)」から「日用品(household & Personal Products)」関連企業とのエンゲージメントテーマについてです。

日用品関連セクターは、化粧品、家庭用および工業用洗浄剤、石鹸、洗濯洗剤、トイレットペーパーなどの衛生紙製品、家庭用電池、カミソリ、台所用品など一般消費財を製造・販売している企業で構成されています。

この業界は、企業間の競争が激しく、またその企業価値は消費者からのブランド評価に左右されやすいと言われています。最近では、透明性が高く、社会的・環境的影響に関して厳しい基準で作られた商品を買いたいという消費者のニーズが増えていることから、業界内では、そうしたニーズを踏まえたプレミアム化(可能な限り高い利益を生む製品を販売するための戦略)の取組みが進んでいます。また、日用品にとって水は極めて重要なものであることから、この業界に属する企業は、将来において水の価格設定や利用可能性について計画を立て、事業活動を行うことが求められています。

そうした日用品業界におけるエンゲージメントのテーマとして、まず「環境」に関しては、「水管理」が取り上げられています。具体的な内容としては、「企業が清潔な水資源への適切なアクセスを維持する上で主要な制約要因は何か?」そして、「企業は、操業地域における水システムにストレスをかけることなく、水資源を安定的に確保するための計画をどのように立てているのか?」と言った点に着目しています。

「ビジネスモデルおよびイノベーション」では、「容器包装のライフサイクル」をテーマとして取り上げ、「容器包装の最適化をどのように図っているのか?」また「最適化により、コスト削減をどの程度達成したか?」という点に焦点を当てています。

「リーダーシップおよびガバナンス」では、「製品の環境、健康、安全に関する性能」、「パーム油のサプライチェーンにおける環境及び社会的影響」をテーマとしています。「製品の環境、健康、安全に関する性能」では、「ある特定の規制物質を使用することによるリスクを予測しているか?」また「そうした規制物質の使用に関してどのような方針を策定しているのか?」、「環境負荷などが懸念される新しい素材や化学物質を特定し管理するため、どのようなプロセスを構築しているのか?」「企業は、環境に優しい化学という概念をどのように自社の製品デザインや開発に取り込んでいるのか?」という点に着目しています。「パーム油のサプライチェーンにおける環境及び社会的影響」に関しては、「サプライチェーンにおけるパーム油に関する課題をどのように管理しているのか?」について問うとともに、「そもそも、大量のパーム油を使用しているのか?」、もしそうであれば、「企業はどのような手法を用いて、パーム油の持続可能な調達を行っているのか?」についてエンゲージメントすることを求めています。

「その他考慮事項」としては、「販売した製品の数量」「販売した製品の総量」「生産施設の数」の把握を求めています。