コラム

Vol.20

今回は、「ユニバーサル・オーナー」についてお話したいと思います。

運用の際に環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)といった非財務情報を考慮するESG投資がグローバルに拡大する中、ESG投資を積極的に推進している巨大な公的年金基金の間で「ユニバーサル・オーナー」という考え方が浸透しつつあります。

「ユニバーサル・オーナー」とは、運用資産の規模が大きく、中長期的な視点で幅広い資産や証券に分散投資を行っている機関投資家のことを指し、現在、ユニバーサル・オーナーとしての存在感を高めている公的年金基金としては、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)やノルウェー政府年金基金が挙げられます。日本では、2015年9月に国連責任投資原則(UN-PRI)に署名した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が自身の役割について「ユニバーサル・オーナーの完璧な事例」と位置付けています。

ユニバーサル・オーナーの運用資産のポートフォリオは、経済・市場全体の一部を占めていることから、個々の投資先企業の直接的なリスク・リターンだけではなく、「経済社会が持続的に成長するのか?」「市場が健全に機能するのか?」といった経済、社会、自然環境などがポートフォリオ全体の成果に与える影響についても考慮しています。そうした影響の事例としては、企業活動に伴う環境汚染や温室効果ガス排出など、経済社会の持続可能性のリスクとなる企業行動が挙げられます。また、経済社会の持続的な成長や市場の健全な機能を確保するため、投資先企業や特定の業界全体、さらには規制当局に対してエンゲージメントを行うのもユニバーサル・オーナーの特徴の1つと位置付けられており、具体例としては、以前お話した「ダイベストメント」の活動が挙げられます。

このように、経済の長期的な健全性に対して、将来的に環境や社会から受ける影響を考慮した結果、ユニバーサル・オーナーと言われる機関投資家は、ESGの重要性を認識し、ESG投資を積極的に採用していると言えます。実際、GPIFでは、「ユニバーサル・オーナーにとって、環境や社会の問題などネガティブな外部性を最小化することを通じ、ポートフォリオの長期的なリターンの最大化を目指す」ため、2016年7月には、国内株式を対象としたESG指数の公募を行い、現在、採用するESG指数の審査を行っています。GPIFのこうした動きは、日本国内におけるESG投資をさらに拡大していくものと期待されています。