レポート

2018年11月-Vol.270

まとめ

今月のポイント

今月14日に7‐9月期のGDP(1次速報)が発表されます。主要シンクタンクは軒並みマイナス成長を予測しており、2四半期ぶりのマイナスになりそうです。今期は酷暑に加えて、豪雨や台風、地震など相次いで自然災害に見舞われたことが重石になりました。企業収益の拡大を背景に設備投資の増加が続く一方で、輸出は大きめな減少が見込まれています。自然災害に伴う供給制約に加え、9月の関西国際空港の一時閉鎖が下振れ要因になった模様です。それにより海外経済の減速や貿易摩擦の影響が見えにくくなった側面もあり、今後は、これまで以上に月次の経済指標(貿易統計、生産指数等)に注目が集まりそうです。

市場動向
国内債券 海外金利が上昇する場面では、金利上昇余地を試す可能性があるものの、概ね狭いレンジ内で推移するだろう。
国内株式 株価下落からバリュエーションは割安となったものの、世界経済の減速懸念など不透明要因が多く、一進一退の展開を予想する。
外国債券 <米国>米国経済は好調さを維持しているものの、リスク回避的な動きが増えることも考えられ、横這い圏で推移するだろう。
<欧州>欧州経済は安定感を維持しているものの、先行き不透明感が高まっており、横這い圏で推移するだろう。
外国株式 <米国>米中の貿易戦争の悪影響が懸念される状況の下、下落局面では自社株買いがサポート要因になると予想する。上旬の中間選挙結果の他、7-9月期の決算発表などを消化しながら一進一退の動きになるだろう。
<欧州>足元の企業業績の増益は維持されるものの、自動車を中心に業績下方修正が継続するなか、米中の貿易戦争を巡る報道、ブレクジットの行方、イタリアの財政状況などが懸念されて、米国市場をアンダーパフォームするだろう。
為替市場 米国経済は好調さを維持しているものの、トランプ大統領の金融政策や為替に関する発言によって振れることも考えられるため、ドルは対円で横這い圏での推移を予想する。ユーロ圏経済は安定感を維持しているものの、欧州の政治リスクや米中間選挙など不透明要因が意識され、ユーロは対ドルで横這い圏での推移を予想する。
虫眼鏡

『シニア消費と投資』

ポイント

今月14日に7‐9月期のGDP(1次速報)が発表されます。主要シンクタンクは軒並みマイナス成長を予測しており、2四半期ぶりのマイナスになりそうです。今期は酷暑に加えて、豪雨や台風、地震など相次いで自然災害に見舞われたことが重石になりました。企業収益の拡大を背景に設備投資の増加が続く一方で、輸出は大きめな減少が見込まれています。自然災害に伴う供給制約に加え、9月の関西国際空港の一時閉鎖が下振れ要因になった模様です。それにより海外経済の減速や貿易摩擦の影響が見えにくくなった側面もあり、今後は、これまで以上に月次の経済指標(貿易統計、生産指数等)に注目が集まりそうです。

今月の主なポイント
11/6 (米)中間選挙・・・事前予想(上院‐共和党、下院‐民主党)通りの結果になるか
11/13 (伊)2019年予算再提出期限・・・予算修正の有無やその修正幅
11/14 (日)7‐9月期GDP(1次速報)・・・上記参照
11/30 G20首脳会談・・・開催中に見込まれる米中首脳会談の行方
実質GDP成長率(前期比年率)

出所:内閣府資料をもとに富国生命投資顧問作成

国内債券

指標銘柄/新発10年国債
10月の国内債券市場

10月の債券市場はほぼ横這いとなった。月初、米国長期金利の上昇を受け10年国債利回りは一時0.155%まで上昇したものの、その後は、内外の株価下落や日銀の国債買入れ額に変更がなかったことから低下し、0.12%で終了した。

月初、10年国債利回りは、米国を中心とする海外長期金利の上昇を受けて上昇基調となり、0.155%まで上昇する場面があった。その後は、米国の株価急落や30年国債入札が順調な結果となったことなどを受けて金利上昇には歯止めがかかり、0.14%を中心に狭いレンジ内で推移した。月末にかけては、日銀が23日夕方に開いた「市場調節に関する懇談会」において、国債買入れオペについて具体的な変更に言及しなかったことや、日銀の国債買入れ額が減額されなかったことを受けて、買い安心感が広がり、金利は低下し、月末は0.120%で終了した。

イールドカーブは、先物ゾーン(残存7年)の低下幅が相対的に大きくなった。

信用スプレッドは、横這いとなった。

11月の国内債券市場

11月の債券市場は、概ね狭いレンジ内で推移すると予想する。但し、海外長期金利が上昇する場面で、金利上昇余地を試す展開もあるだろう。11月の債券市場のポイントは、①日銀の国債買入れ、②米国の政治動向、③欧州の政治動向、と考える。

①<日銀の国債買入れ>今後、日銀がどのように弾力的な国債買入れを実施するかが市場参加者の注目点となろう。11月は、短、中期ゾーンのオペ回数が減らされるなど、従来からのオペの運営方法が変更される。海外金利の動向などを受けて国内金利が大きく動いた際に、日銀がどの水準でどの程度の買入れを行うかを巡り、当面は思惑が先行しそうだ。

②<米国の政治動向>11月の中間選挙に向けてトランプ大統領の言動に注目が集まるだろう。トランプ大統領はFRB(連邦準備理事会)による利上げに対する批判を複数回行っており、その言動によって金融市場が左右される可能性がある。また、中間選挙の結果次第では市場のボラティリティが高まる場面も想定され、注意が必要だ。

③<欧州の政治動向>ブレクジット(英国のEU離脱)交渉、イタリアの財政赤字問題への懸念に加え、ドイツの政治不透明感が高まっている。メルケル首相がキリスト教民主同盟(CDU)の党首を辞任する意向を表明したことを受けて、当面は誰が後任に就くかが注目を集めるだろう。もし、メルケル首相の政治方針と大きく異なる考えを持つ人物が就く場合、市場のボラティリティは高まる可能性がある。

イールドカーブは、国債入札や日銀の国債買入れオペに対する思惑から、超長期ゾーンを中心にスティープ化とフラット化を繰り返す展開を予想する。

信用スプレッドは、概ね横這いで推移すると予想する。

国内株式

日経平均株価225種東証株価指数(TOPIX)
10月の国内株式市場

10月の株式市場は、世界景気の先行き不透明感などから米国株が急落したことを受け、日経平均株価は9.12%の下落となった。

月初は米国とカナダによるNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉の妥結などが好感されて、日経平均株価は約27年ぶりの高値更新となったものの、その後は米長期金利の上昇や米中貿易摩擦への警戒感から米国株が大きく下げたことなどを受けて急落した。月央には海外株式市場の戻りなどから反発する局面はあったが、下旬に入ると中国の7-9月期GDP成長率が市場予想を下回り、世界景気の先行きに減速感が強まったことや、サウジアラビア問題など国際情勢の緊張感が高まったことなどから再び大きく下落した。月末にかけては、円安・ドル高となったことや米国経済指標の好調による米国株の上昇などから反発する展開となった。

業種別には、海運、ガラス・土石、化学など全てのセクターで下落した。

11月の国内株式市場

株価下落からバリュエーションは割安となったものの、米中貿易戦争の長期化などにより世界経済が減速する懸念が強まってきている。ドイツ政局、サウジアラビア情勢など欧州政治不安や地政学的リスクもあり、一進一退の展開を予想する。

IMF(国際通貨基金)は、米中貿易戦争や利上げに伴う新興国からの資金流出などのリスクを示唆し、世界経済成長率の見通しを2018年、2019年とも+3.7%として前回(7月発表)からそれぞれ0.2ポイント下方修正した。2018年は米国の拡大などから先進国を据え置き、トルコ、アルゼンチンなどの減速から新興国を引き下げ、2019年は貿易戦争の影響などを受け米国が減速をすることから先進国も下方修正している。中国については、2017年+6.9%、2018年+6.6%、2019年+6.2%と、年々成長率が低下する見通しとしている。

発表が続いている7-9月期決算については、情報サービス、ゲームなどは好調を維持しているものの、機械、電機など外需セクターについては減速感が強まってきている。これまで拡大基調であった半導体や工作機械の需要は中国市場を中心に弱含みとなっており、大手機械・電機メーカーの業績の減額修正も散見され始めるなど、今下期から来期にかけての業績の伸び率が鈍化する可能性は高まっていると考えている。

こうした状況の中で、株価は大きく下落している。日経平均株価の25日移動平均線からのマイナスかい離率は一時8%を超える水準まで拡大し、ヒストリカル的には反発することが多い水準に達した。短期的には急落の反動から自立反発する可能性はあるものの、世界経済の減速による企業業績の減額リスクに加え、ドイツ政局、ブレクジット(英国のEU離脱)、イタリア財政問題などの欧州政治不安や、サウジアラビア情勢など不透明要因が多く、本格的な上昇に転じるには時間がかかると見ている。

外国債券

米10年国債ドイツ10年国債
10月の米国債券市場

10月の米国の長期金利は上昇した。好調な経済指標の発表、ハト派とみなされる地区連銀総裁による利上げ継続が適切との発言などを受け、上旬に一時3.2%台半ばまで上昇した。しかし、その後は欧州金利の低下の影響などを受け、月末は3.1%台半ばとなった。

イールドカーブはベアスティープした。上旬には長期から超長期ゾーンにかけてパラレルに近い金利上昇となったが、その後の金利低下局面ではブルスティープし、結果としてベアスティープした。

10月の欧州債券市場

10月の欧州(ドイツ)の長期金利は低下した。EUサミットで英国の離脱交渉に進展がなく、またイタリアの2019年度予算をEUが拒否するなどの政治的不安に加え、弱い経済指標の発表もあり、月末には0.3%台後半まで低下した。

周辺国国債とドイツ国債のスプレッドは拡大した。予算を巡ってEUとの対立が深まったイタリアに加えて、スペイン等のスプレッドも連れて拡大した。

11月の米国債券市場

11月の米国の長期金利は横這いを予想する。米国経済は好調さを維持しており、当面は景気回復が続くだろう。但し、中間選挙を控え、トランプ政権の政策運営に関する不透明感も高まりやすい。サウジアラビアと米国の関係が悪化した場合など、リスク回避的な動きが増えることも考えられ、金利は横這い圏で推移するだろう。

11月の欧州債券市場

11月の欧州(ドイツ)の長期金利は横這いを予想する。ユーロ圏経済は全体的には安定感を維持しつつも、独英伊の政治リスクや中国経済の減速懸念などもあり先行き不透明感が高まっている。一方、ECB(欧州中央銀行)は金融政策の正常化を徐々に進めるとみられるため、金利は横這い圏で推移するだろう。

外国株式

米国S&P500指数ダウ工業株30種平均ドイツDAX指数イギリスFT-SE(100種)指数香港ハンセン指数
10月の米国株式市場

10月の米国株式市場は、S&P500指数で7ヵ月振りに6.94%の下落となった。米国長期金利が7年振りの水準に上昇し、米中貿易戦争の影響からグローバル景気見通しに不透明感が強まる中、サウジアラビア関連のネガティブ報道、7-9月期の企業業績発表で資本財・サービスセクターなどからの警戒的な見通しなどをきっかけにリスクオフ姿勢が強まり、急落した。その後、売られ過ぎ感の台頭で反発した。セクターでは、ディフェンシブセクターである生活必需品、公益が買われた一方、エネルギー、一般消費財・サービス、資本財・サービスなどが売られた。

10月の欧州株式市場

10月の欧州株式市場は、米国市場同様に不透明感が強まったことや、イタリアの財政見通し、ドイツ地方選での与党の敗北、自動車関連企業の業績見通しの引き下げなどから売られた。国別では、ベルギー、スウェーデン、デンマークなどを中心に全ての市場が下落した。セクターでは、電気通信サービスのみが買われる一方で、情報技術、資本財・サービス、一般消費財・サービスなどが売られた。

10月の香港株式市場

10月の香港株式市場は、10.11%の大幅下落となった。米中貿易戦争が激化する中、中国の主要経済指標の悪化による景気減速懸念の台頭や、人民元安、米国株式市場の急落に端を発する世界株安により大幅下落した。中国政府による景気刺激策期待で反発する局面もあったものの、戻りは限定的となった。

11月の米国株式市場

11月の米国株式市場は、米中貿易戦争の悪影響が懸念される状況の下、上旬の中間選挙結果の他、7-9月期の決算発表などを消化しながら一進一退の動きで横這いを予想する。決算内容は、概ね好調な増益が確認されると予想されるが、一部企業からの慎重な見通しが市場の警戒感を強めている。一方、下落局面では自社株も入ると予想されることや、中間選挙以後の米中貿易戦争に関するニュースフローが注目されるだろう。

11月の欧州株式市場

11月の欧州株式市場は、米国同様に足元の企業業績の増益は維持されるものの、自動車を中心に業績下方修正が継続しており、米中の貿易戦争を巡るニュースフロー、ブレクジット(英国のEU離脱)の行方、イタリアの財政状況などが懸念され米国市場をアンダーパフォームする局面は継続するだろう。

11月の香港株式市場

11月の香港株式市場は、米中貿易戦争を巡る不透明感に加え、人民元動向や中国本土の景気減速などが懸念される。中国政府の景気下支え策への期待感は残るものの、欧米を取り巻く不透明要因も払拭されず、米国市場に対してアンダーパフォームを予想する。

為替動向

為替(ドル/円)為替(ドル/ユーロ)為替(ユーロ/円)
10月のドル/円相場

10月のドル/円相場は、ドル安円高となった。好調な米国経済指標を受けて月初114円台半ばまで買われたが、株価下落によるリスク回避から下旬には111円台前半まで売られた。月末にかけて株価が戻ると買い戻され113円近辺で月末を迎えた。

10月のユーロ/ドル相場

10月のユーロ/ドル相場は、ユーロ安ドル高となった。中旬までは方向感に欠ける動きとなったが、その後はイタリアの財政問題やドイツの政局、イギリスのブレクジット(英国のEU離脱)問題などからユーロが売られ、月末には1.13ドル近辺となった。

10月のユーロ/円相場

10月のユーロ/円相場は、ユーロ安円高となった。ドルに対して、円は買われユーロが売られたためユーロ安円高となり、月末は127円台後半となった。

11月のドル/円相場

11月のドル/円相場は、横這いを予想する。米国経済は好調さを維持している。但し、11月の中間選挙が近づく中、トランプ大統領がFRB(連邦準備理事会)の金融政策やドル高を批判することも考えられるため、横這い圏での推移を予想する。

11月のユーロ/ドル相場

11月のユーロ/ドル相場は、横這いを予想する。ユーロ圏経済は全体として安定感を維持していると考えられるものの、中国経済の減速への懸念、独英伊の政治リスクなどがユーロの下落要因となりやすい。一方、中間選挙が近づく中でドルの上値が抑えられることも考えられ、横這い圏での推移を想定する。

11月のユーロ/円相場

11月のユーロ/円相場は、横這いを予想する。ドル円・ユーロドル共に横這いを見込むため、ユーロ円は横這い圏での推移となるだろう。

虫眼鏡

「シニア消費と投資」

最近一番気になった(ショッキングな)ニュースは「2017年に60歳以上の世帯消費が60歳未満にほぼ並んだ」というデータを見た事です。少子高齢化の影響や若者の買い物離れなど何となくシニア消費の割合が高まっているようなイメージはありましたが、まさかその水準がほぼ半分になっているとは驚きました。私もアラフィフ世代となり数年後にはシニアと呼ばれる歳になるわけですが、アナリストとして担当している業界でもシニアの消費拡大を実感するケースは多々あります。

例えばコンビニエンスストアやスポーツクラブのシニア来客比率が上がっているとか、手軽にたん白源を摂れる商品としてチーズの消費が増えているなど、小売りや食品などでは活発に消費するシニアの動向が良く話題になります。また、化粧品やサプリメントなどでも機能性を高めた新製品の売上にシニア層が貢献しているというケースも多く取り上げられます。1947~49年生まれの団塊世代が70歳代となり医療費支出が増えている部分もありますが、私のようなポスト団塊世代でもそうであるようにバブル期に大量消費した世代がシニアとなっても高い「モノ」を買う(食べる・飲む)習慣が残っているように思われます。実際、自動車やお酒・牛肉などへの支出金額も60歳代が最も多くなっており、かつお金や時間に余裕ができたのか旅行に支出する金額も高くなっています。ちなみに私の両親(父は80歳中ば、母は70代後半)も父が定年退職した頃から毎年のように海外旅行に行っています。私も50歳を迎える年に生まれて初めて海外(旅行ではなく出張です)に行き、その後は海外旅行の先輩である両親と一緒に世界を(アジアですが)旅するようになりました。

最近の若者はスマホ世代とも言われテレビを殆ど見ないそうですが、シニア層では某テレビ局の朝ドラにハマる人が多く最近の視聴率は上昇傾向にあります。現在放送されている朝ドラはインスタントラーメン誕生にまつわるストーリーになっていますが、それ以前のドラマについても昭和の高度成長期における「ものづくり」に賭けた人々が題材となるケースが多いように思われます。私の母親も毎年行っている小学校の同窓会で朝ドラや大河ドラマの舞台となった岐阜や長野に旅行し、若者のアニメ「聖地巡礼」ならぬ「ロケ地巡礼」を楽しんだようです。また私の母親は行く土地行く土地で食べ物やお土産など地産地消に貢献しており、ドラマで見た土地に行って物を買う(食べる)といった「コト」&「モノ」消費を見事に両立しています。

また私が中学時代から続けている水泳ではマスターズという大会があり、100歳を超えた女性スイマーから90代、80代とレースが続き、70代まで来てやっと若手登場といった印象になる位にお元気な方が多く参加されています(レース後の飲み会も大変盛り上がるそうです)。メタボや老化予防にはたん白質の摂取と運動による筋肉量維持が大事だと言われていますが、しっかり食べて(飲んで?)たくさん泳いでいるシニアスイマーがお元気なのも納得できます。

シニア消費の話からは外れますが、私は少子高齢化や「働き方改革」で活況となっている人材サービス業界も担当しています。統計上は有効求人倍率の顕著な上昇により人手不足感が年々高まりつつありますが、今のところ働き手としてのシニア活用に積極的な企業は少数に止まっています。政府も定年延長などにより70歳まで働くことのできる社会実現を目指しているようですが、高齢者の働く場所に工事や介護など肉体労働を要するケースが多いなど問題も指摘されています。私が普段アナリストとしてお目にかかるシニア層は上場企業の社長や取締役といった方が多く、最近では社外取締役として他社からも引く手あまたという優秀な方々もいます。一方では役職定年や早期退職などにより仕事の一線を退かざるを得ない人も多く(そちらの方が大半ですが)、シニア層における収入の二極化がさらに進みそうな状況となっています。一部の消費財メーカーでは専門分野で長く経験を積んだシニア層に商品開発の専門役職を設けるケースや生産工程で若手の研修講師として活用するなど、シニアのモチベーション(収入も?)を維持する雇用制度を導入している企業もありますが、実力の世界とは言えある年齢を境に収入が増える人と一気に減ってしまう人が出る事は同じ人間の価値判断や評価方法としてどうかという気持ちになります。

また最近2番目にショッキングだったニュースは「認知症患者の金融資産が昨年143兆円」と試算されたというデータで、働きたくても良い働き場所がない元気なシニアと多くの資産を持っていても活用できない高齢者がそれぞれ多く存在するという複雑な社会構造が明るみに出ました。約600兆円の金融資産を持つ60歳代のシニア層が5年後には75歳以上の後期高齢者に達し始める事もあり、人生100年時代に向けて健康寿命の延伸と共に働きながら元気に消費できる社会をどのように築けるかが日本の課題になりそうです。

最後に運用会社の人間らしくシニア世代の資産活用という話題にも触れておきたいと思います。シニア世代は住宅ローンの支払いや子育て資金の支出が終わり、退職金などの資産運用によってどれだけ老後の支出をカバーできるかがポイントだとファイナンシャルプランナーの助言で良く聞かれます。そのような運用の対象として「人生100年時代」をテーマにした投資信託の設定が相次いでいますが、SRI(社会的責任投資)ファンドなどを通じて間接的に社会貢献しながら投資先の株価上昇に期待するという形もあるかと思います。

小売・サービス担当のアナリストとして聞くのは相続対策で金の延べ棒や1,000万円以上する高級時計が百貨店で売れているという話題や現金を自宅で保管するために警備会社に金庫のセキュリティーサービスを依頼する人が多いという話ですが、これは日本経済の発展にあまり繋がらないのでついでに百貨店株や警備会社の株にも投資してくれればいいと思います。また会社経営者が税率の低い海外へ移住したり資産を移したりするというケースも耳にしますが、なるべく国内での消費や投資(または寄付)に資産を使って欲しいと思います。証券会社のOBには株主優待や株主総会のお土産を楽しみに老後生活を送る悠々自適なセミプロ投資家もおられますが、株式投資は(余裕資金の範囲であれば)退職後も経済や社会についての関心を持てるため脳の老化防止にもいいそうです。